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みんなの観戦記

 

リーダーの証明!
MaSN(なんじゃ)さん
2003年4月19日、リーガ、メレンゲ戦(サンティアゴ・ベルナベウ)

思い立って始めての海外旅行に選んだ先はスペイン、治安などへの不安の中の出発。空港集合時間が早かったため、前日に家を出たのでサビオラの出場がどうなるのかも分からないまま・・・。なんとか18日金曜にマドリー到着。迎えてくれたガイドが、木曜の練習でラウールが捻挫して出場が微妙、と教えてくれる。貰ったチケットはバックスタンド2階席。全体を見る分にはいい席だ。

 

19日土曜、朝から観光に行ったこともあり、昼からスポーツ新聞を探すが中心部のどの売店にも売っていない。すでに売り切れた模様。試合3時間前の18時30分から、中継TV局で事前番組が始まる。スタジアムに向かう人々を映し、サポーターインタビューなどを流しつつ、サビオラとラウールは出場するか?の話題が中心だった。

ホテルを出る際、フットボール観戦と気付いたフロントの人に「Hala Madid !」(注:頑張れマドリー、の意)と声を掛けられる。地下鉄10番線でサンティアゴ・ベルナベウ駅へ。車内にも徐々にマフラーなどを身につけた客が増える。駅を出て、最初に目が合ったスペイン人が、こっそりバルサのマフラーを見せてにやっと笑った(笑)。

試合2時間ほど前のスタジアムの周辺。大音量で盛り上げるFM局ラジオマルカのイベント、人の波、グッズにひまわりの種などを売る露店、騎馬警官、爆弾みたいな爆竹の音、通りを埋めるツアーバス、チャンピオンズのマンチェスター応援ツアーのポスター・・・。遠いところにきてしまった、と実感。もっとも、日本人もか・な・り多かったのだが。マルカとAS紙はサンティアゴ・ベルナベウ周辺で無料の号外を配っていて、知人への土産も出来て安心。やはりラウールの出場が焦点だった。

ペットボトルのふたを捨てて入場。中はほぼコンクリート打ちっぱなしで質素。階段を上がってスタンドに出る瞬間はどのスタジアムで何度経験してもいいもんだが、今回は特別。目の前には、テレビでしか見たことのないピッチと巨大なスタンドが・・・。ブーイングの中のバルサの選手入場に続いて、ドミンゴの「Hala Madrid !」が流れてきただけで、その雰囲気に圧倒された・・。

さて試合について。選手が練習に入ってきた段階で、今回のクラシコの「テーマ」がハッキリする。バルサ全体に向けられている、と思ったブーイングに罵声、指笛が実は一人に向けられている、と気付くのにはさほど時間はかからなかった。つまり今宵はルイス・エンリケ祭り”。フィーゴとロナルドが祭り上げられたカンプノウの仕返しを、という雰囲気だった。練習、試合中とどこからとなくスタジアム全体がルイス・エンリケに対する罵声のチャンとを大合唱する。

15分、ラウールのヘッドに飛び出したロナルド。「あれ?オフサイドなし?」(ソリンが残っていた)と思った瞬間、1対1を決めマドリー先制。爆発するスタジアム。パワーアップする罵声。

しかし、そんなマドリディスタを黙らせたのは、やはりあの男だった。32分、オーベルマルスのフリーキックをクルィベルが折り返し、ソリンとカシージャス、デフェンサが交錯したこぼれ球に詰めたのはカピタン、ルイス・エンリケ!沈黙の後、誰のゴールか気付いたマドリディスタのブーイングが起こる中、バックスタンド右側コーナーに向け走るエンリケ。その視線の先には、2階席上部に詰め掛けたバルセロニスタがいた・・・。大ブーイングに、ゴールという結果で答えたルイス・エンリケ。やっぱりバルサのリーダーであることを強烈に証明した。

これでヒートアップした試合だが、4分後事件が起こる。バックスタンド側タッチライン沿いでジダンのプジョーへのファールから起こった乱闘騒ぎ。ルイス・エンリケに対するジダンのアイアンクロー、モッタに対するマケレレの髪つかみはハッキリ見えたので、2,3枚はカードが出ると思ったが何事もなく進行。この結果、主審は翌日以降の新聞で激しく叩かれることとなる。

44分、メンディエタのゴールはオフサイドの判定。安堵するスタンドだが、これも微妙極まりない判定だった。

後半、降りしきる小雨の中(ベルナベウはバックスタンドの屋根がない)、前半はいろんな意味で目立ったジダンを消すことにモッタが成功し、バルサが主導権を握る。試合もこう着状態になり、マドリディスタの不満は、前半からボールを持ちすぎてはチャンスを潰していたフラビオ・コンセイサオにも向けられた。ボールが回るたびに怒るため息に小さなブーイングで、スタンドは彼を信用していたいことを表明。71分に代えられるときは、かなり大きなブーイングが起き、ファンの見る目の厳しさにもビックリした。まあ、ルイス・エンリケ交代時のブーイングほどではなかったが。

その後はスタンドが沸くシーンもなく、デル・ボケスは強行出場のラウールと心中した感じだった。雨と寒さに震えながら試合終了。帰りに寄ったバールで、結果を聞いてきたおじいちゃんにエンパテ・ア・ウノ(1-1)と言ったときのガッカリとした表情が忘れられない。内容を言ったら、もっとガッカリしただろうが。

翌日の新聞、エル・ムンドはいかに不正なジャッジの連発で勝ちを盗まれたのかを1面使った写真特集で強調。マドリー系2紙は乱闘が1面も、AS「バルサは自分を取り戻した」「ルイス・エンリケのリーダーシップで持ちこたえた」、マルカ「(マドリーの)マンチェスター遠征前の荒れた試合で、バルサはリーダーを証明」「ルイス・エンリケ、マドリーの自制心を失わせる」とルイス・エンリケを称える論調には少々ビックリ。マルカの小見出し「los blancos sin hutbol , los azulgrana sin gol」が、この試合の全てのような気もした。ムンドはモッタ、ASはルイス・エンリケに最高点。マルカは特に目立つ最高点はないものの、主審に最低点は各紙共通だった。

初めての海外フットボール生観戦。クラシコということもあって互いの意地が目立ち、試合の質は高くなかったかもしれないが、日本じゃ味わえないフットボールの周辺の奥深さとファン感情を感じることが出来た気がする。また行きたいな、今度はカンプノウのクラシコに。