自らゲームをややこしくし、連勝を止めてしまったかのようなゲーム。
対戦相手を過小評価しない、と常日頃から語ってはいるペップ・グアルディオラ監督ではあったが、この日はバーゼルをさすがに低く見積もってしまったのか、先発メンバーはテスト色の濃いものとなっていた。エトーにメッシ、チャビといった出番の多い主力組はベンチからのスタート。いくらバルサであっても、これだけ未知の組み合わせだと影響は出る。
中盤では、チャビの不在が大きく感じられた。このところのような流麗なパスワークは鳴りを潜め、どちらかといえば個人による突破が目立つバルサ。バーセルは完全に主導権を放棄していたのでボールは回せるのだが、コンビネーションによって守備網を崩すことは出来ない。リズムもイマイチだった。
そういう時は、運にも味方してもらえないもの。5分には、イニエスタのパスに抜け出したアンリが得意の位置からシュートを放つ。しかし狙いすぎたか、彼のシュートはポスト右に流れていってしまう。さらに7分にはプジョルからスローインを受けたアンリが、トラップからアクロバティックにチレーナでボールを送り込むのだが、中央のボージャンがこれを上手くコントロールできず。このふたつが決まっていれば、おそらくゲームは大きくバルサに傾いていただろう。しかし一気に流れを掴めなかったバルサは、攻め手を失っていく。
守備に意識を集中し、どうにか引き分けを、というのがバーゼルの狙いだった。当然エリア周辺には守備陣がずらりと並び、ゲームメイカーとなるイニエスタは自由にパスを供給できない。バルサの攻めは前線への中長距離のパスが多くなり、そのほとんどは守りの網に引っかかっていった。ならば、とセットプレーからゴールを目指すも、この日はもうひとつ上手くいかない。39分のアンリのヘッドは惜しかったが、コンスタンソに阻まれている。
バーゼルの攻撃は、ストレージャーの高さ一本。37分にはコーナーから前半唯一といえるチャンスを作っているのだが、ストレージャーのヘッドは枠を捉えなかった。
そうして、消化不良のまま前半は終了し、後半も同様の流れでゲームは進んでいく。しかし地元ファンに勝利を提供したいグアルディオラは、リアクションの準備は早々に開始していた。ベンチに休ませていたチャビとメッシに、後半5分頃にはアップを命じたのである。そして彼らは、60分にピッチへ送り込まれた。スター選手の登場に、ワーッと沸くカンプノウ。ここでメッシは、バロン・デ・オロ候補である理由をまざまざと見せ付けるのだった。
62分、メッシはドリブルならびにアンリとのワンツーによってバーゼル守備陣を混乱に陥れ、そのままズバッと先制ゴールを突き刺してしまった。1時間も苦労していたのがなんだったのか、と思えるほどに、あっさりと決まったゴール。このあたり、さすがとしか言いようがない。
中盤にチャビとイニエスタが入ったことによって、バルサは自分たちのパス展開が出来るようになっていた。しかし不運がチームペップを襲う。バルサ快進撃の立役者の一人イニエスタが太ももの筋肉を傷め、65分に交代となるのだ。ペップは致し方なく、エトーをピッチへ送り込んだ。
この頃、バーゼルもまた勝負のカードを切っていた。68分、ストッカーに替えて、スイス期待の若手デルディヨクを送り込んでいたのだ。そしてこの采配がずばり的中。バルサが追加点を奪えずもがいている中(エリア右フリーキックからピケのヘッドがポスト直撃!)、デルディヨクが意地の同点弾を叩き込むのである。82分、ピッチ右サイドからのカリトスによるアーリー気味のクロスを、エリア中央のデルディヨクが体勢を崩しながらも執念のボレーシュート。これにはさすがのバルデスも、どうすることも出来なかった。
そしてそのまま、ゲームは終了。他会場でスポルティングが勝利したため、バルサのグループリーグ突破は決まりはしたが、公式戦連勝が11で止まってしまったこと、勝てるゲームを落としたこと、そしてイニエスタが6週間の離脱になったことがとにかく痛い。バルセロニスタにとっては、苦い味わいの試合となった。好事魔多し、である。
|