時計が80分を経過する頃まで、ゲームの主役はかつてバルサに所属していたポルテーロ、アルナウだった。バルサが放つシュートの雨アラレを、ことごとく弾き返す守護神。まさしく昨日のアルナウは“壁”そのものであり、彼の守りを打ち破ることなど不可能なのではないか、とすら思わせるだけの素晴らしいパフォーマンスを披露していた。ハイクロス、足元へのシュート、デランテーロとの1対1、あらゆる局面でバルサの攻撃を食い止めるアルナウ。開幕戦のボナーノもすごかったが、アルナウにはポストに助けられるということさえなかった。
試合の流れは、一方的にバルサのものだった。最初の10分だけで、2回のゴールチャンスを掴むアスールグラーナ。これらはいずれもアルナウによって処理されるのだが、この時点ではまさか彼があれほどまでのプレーをしようとは誰もが考えてはいなかった。今日のバルサは良さそうだな、といった程度だった。この調子で攻めていれば確実にゴールは訪れるし、笑って観戦を終えられそうだと誰もが考えていた。
マラガは守備的ではあったものの完全にゴール前に引きこもるといった様子はなく、かといって積極的に攻めてくるでもない。彼らのリズムは遅く、バルサは簡単にボールを中盤で奪い返した。ゴールエリア付近まで攻め入られるという場面は皆無といえるほど。バルサは自由にボールを回し、マラガ守備陣をかき回し、シュートを放つがしかし、アルナウは黙々とそのシュートを弾き返していった。スタジアムはまだ楽観的なムードではあったが、アルナウの出来がいいことだけは誰の目にも明らかであり、早めにゴールを決めなければ面倒なことになりそうだという雰囲気はあった。前半終了寸前にエドガルに超フリーでヘディングを決められたシーン。マラガの攻撃は唯一それくらいだったが、あまりにも決定的であり、バルセロニスタは一瞬肝を冷やす。もらい事故だけは避けなければならない。
後半に入るとライカーは、マルケスに替えてイニエスタを投入する。これで中盤はさらに想像力を増し、前半を上回るシュートの雨がマラガゴールに襲い掛かっていった。しかしゲームはあたかもアルナウのリサイタルショーといった展開で、バルサのいかなる試みも彼の壁を崩せない。強烈なミドルをこぼしてしまった時もあったが、今度はデフェンサたちが懸命の守りでどうにかこうにかクリア。時間はどんどんと経過していき、バルサにも次第に焦りの色が見られるようになっていった。その典型が、何とか自分で状況を打破したいと願うエトーだった。ベンチもその空気を感じ取り、経験値の高いラルソンをピッチに送り込んだ。
そして80分、ついにその時はやってくる。こういうときに何とかしてくれるのがクラック・ロナルディーニョなのだが、昨日も期待を裏切らない。ほぼ100%のフィジカル状態にあるロニーはゲームを通じて素晴らしいパフォーマンスを提供。マラガの選手たちはよくそれを守ってはいたのだが、たった一つのプレーで試合は決定付けられた。エリア内でドリブル突破を試みる彼を止めようとしたデフェンサが、ペナルティとなるファールを犯してしまうのだ。よく見るとロナルディーニョの芝居なのだが、審判の目にはあれはファールと映った。ドリブル突破をスライディングタックルで止めなければならない状況に追い込まれたマラガの負けだった。
これをロナルディーニョは自ら左上部に豪快に突き刺し、勝負あり。残り10分、ひょっとしたら・・・と嫌な空気が漂いつつあったカンプノウは喜びを爆発させ、そしてホッと安堵した。それまでの努力が、ようやく報われた一瞬だった。さらに試合終了直前には、ロナルディーニョは2-0となる芸術的なスルーパスも披露。これにラルソンが反応し、焦ることなく完璧といえるバセリーナ(ループ)でマラガにトドメを刺した。久しぶりに見た、美しいバセリーナだった。
とにもかくにも、カンプノウ3連戦の最初の2つを勝利で飾れたことに乾杯。しかもバルサはフォームを取り戻しており、どこかの白組と異なってムードは非常に明るい。これからさらに復調していくであろうことを予感させるナイスプレーだった。普通であればゴレアーダになっていただろうが、それをスリリングな展開にしてくれたアルナウにも今となってはお礼を言える。チームが調子に乗っているときの、短期連戦はありがたい。イレギュラーな状況から脱却し、バルサはカンペオンとしてのパフォーマンスを甦らせ始めた。 |