追い詰められた“バスクのライオン”が、形振り構わずに結果を求めてきた。リーガ随一の歴史と伝統を誇る彼らが、まるで弱小クラブのようにウルトラ守備陣形を採用してきたことが切ないゲームだった。ビルバオのシステムは5-4-1。11人で自陣に引きこもり、2人で攻める。こんなアスレティックなんて、みたくない。
しかしそうもいってられないのが現実で、バルサは彼らの戦術にすっぽりとはまり込む。15分、ショートコーナーからのセンタリングを、ジョレンテがヘッドでゴール。まずジェステに自由にセンタリングを上げさせたのが問題だったし、エヂミルソンがジョレンテへのマークを外していたのが更なる問題。超守備的なビルバオが先制し、さらに彼らは亀となった。ライオンから亀へ。悲しい現実。
バルサは頼みの中盤が窒息させられ、前線に有効的なボールを供給できない。ロナルディーニョはこれでもかというくらいの密着マンマークを受けており、自由度はゼロに近かった。しかしそれでも仕事をするのがクラックというもので、37分、彼の鋭いクロスに思わず右手が当たってしまったアモレビエタ。これをプレッシャーに負けずにロニーが決めて、バルサは同点に追いついた。アスレティックはガッカリしたことだろう。
そして後半、バルサは一気に試合を決めにかかる。アスレティックのマークも前半に比べて甘くなり、怒涛の波状攻撃。シュートシュートの連続で、ビルバオの鼻っ柱をどつく。そして51分、一連の流れの末のバン・ボメルのミドルシュートをラフエンテがどうにか弾いたところを、詰めていたメッシーがゲット。ついにバルサは逆転に成功し、落ち着きを取り戻した。
アスレティックは全てを捨てて攻撃に出るしかなくなったが、これが負けが込んでいるチームなのか、大した反撃もなく終盤へ。バルサが無事勝利を手にしようとしていたとき、馬鹿げた事件は起こった。
再三のドリブル突破を潰されてもファールをとってもらえなかった苛立ちがあったのか、それともなんらかの挑発の言葉があったのか。ピッチに座っていたデコの襟元をグルペギが引っ張りあげるようにして立ち上がらせようとし、これにデコは激高。グルペギの後ろ髪を思い切りふん掴み、一発退場となった。
さらには退場処分にはならなかったものの、直後にエトーもまたエスポジトに向かってツバを吐くという行為をしており、テレビにしっかりと映っていることから、今後制裁処置が下される可能性が高くなった。首都方面のメディアも、きっとうるさいことだろう。しかしこれはバルサのシャツを着ている選手が絶対にやってはならない行為。エトーとデコには、もう反省を期待する。 |