予想通りの、いや、予想をも超えた激戦。
試合は序盤からバルサが主導権を握る。オープニングシュートはレオ・メッシー。このゲームの行く末を暗示するプレーとなる。チェルシーは自慢の中盤によるプレスで圧力をかけてくるが、この日のバルサは全く負けてはいない。高い守備ラインでチェルシーのカウンターを阻止し、ボールは圧倒的に支配していた。効いていたのは中盤のデコ、エヂミルソン、そして左サイドのメッシー。彼はマーカーであるデル・オルノを再三翻弄し、頭に血の上ったバスク人ラテラルは37分、冷静さを失ったタックルで一発退場。右サイドを駆け上がり、ロッベンのマークを股抜きで振り切ったメッシーに対し、体当たりを食らわせたことへの処分だった。デル・オルノはその6分前にもメッシーの左ヒザにスパイクを入れており、当然の判定といえる。
モウリーニョはジョー・コールを下げてジェレミを投入。どうにか守備を混乱から回避させようと試みる。チェルシーは攻めへのオプションを失い、バルサは悠々と中盤以降を制圧、チャンスを作っていった。マルケスのシュートを防いだマケレレは明らかにハンドだったが、すでにひとり退場になっていたということで審判は見ない振り。
後半、モウリーニョはクレスポに替えてドログバを送り込む。これが功を奏し、チェルシーの攻めは前半よりも大分改善された。ひとりでも前線で基点となり、シュートまで持ち込めるドログバは存在感を発揮し、バルセロニスタがヒヤッとする場面を3回ほど作り出した。後半のキープレーヤーのひとり。
そして59分、バルサは圧倒的に主導権を握っていたにもかかわらず先制点を奪われる。エリア左サイドからのフリーキック、ランパーの蹴ったボールをクリアしようと下がっていったモッタがバルデスと接触、ボールはモッタに当たってバルサゴールへと転がり込んでいった。こんなことってあるのかよ。2年連続して、先制点はオウンゴール。
これでスタンフォード・ブリッジは勝利を確信したことだろう。だがここからが、そこらのチームとバルサの違っているところだ。流れを大きく変えるきっかけとなったのは、やはりラルソンの投入。モッタをベンチに下げてラルソンをトップに置き、エトーは左へ。ロニーがメディアプンタ的に中央に位置するようになると、バルサの攻撃は格段にスムーズになった。試合のリズムは激しさを増し、チェルシーの守備陣形にスペースが生まれ始める。
そして72分、ラルソンがもらったフリーキック。キッカーはロナルディーニョ。彼の蹴ったボールは鋭い弾道でゴールへと唸りをあげ、クリアしようとしたテリーの頭に当たってネットを揺らすのだった。同点にされた!しかもオウンゴールで!これでショックを受けたのか、チェルシーの守備はさらに不安定となる。逆にバルサはイケイケだ。
同じく72分、エリア際からのメッシーのバセリーナは惜しくもゴール左隅のバーを直撃。その直後の73分には、スルーパスから抜け出したラルソンがGKチェクを抜き去ってシュートを放つも、ゴールライン上でテリーの気迫のスライディングによってゴールならず。さらに77分にはエリア内でテリーがメッシーを背後から押しつぶすという超強引プレー。審判がペナルティをとらなかったのが不思議なほどのファールだった。この時間帯、チェルシーの守備ラインは完全に崩壊。息の根が止まるのも時間の問題だった。
けれども79分、チェルシーも懸命の抵抗。ドログバがバルサ守備陣の一瞬の隙を突いて、ゴールライン付近でバルデスと1対1に。彼のシュートをバルデスはかろうじて右手一本でコーナーにするのだが、ヒヤッとする場面だった。
だがこのコーナーのこぼれ球から、バルサの高速カウンターが発動。ロナルディーニョが力強いドリブルでチェルシー陣内まで駆け上がると、左サイドのラルソンへパス。エトーが右へ流れ、左にスペースを生んでいたのが効いている。そしてラルソンはポストとなってマルケスにボールを落とし、マルケスはダイレクトでセンタリングを供給。これを満を持して待っていたエトーがヘディングで叩き込むのである。
こうしてバルサは逆転に成功し、あとはチェルシーの反抗を余裕のパス展開で封じていく。モウリーニョ就任以来負けのなかったスタンフォード・ブリッジを、陥落するバルサ。しかもチェルシーファンに向かって、「これが本当のフットボルというものだよ」とレクチャーするかのようなプレーで。スコアは1-2。しかし気分的には1-3か1-4くらいの感じがするし、実際にそうなっていてもおかしくはないゲームだった。
“結果を出させたら最強チーム”というチェルシーを相手に、自分たちのプレーを貫いて、これでもかというくらいに存分にフットボルショーを行い、最終的にはプレミア王者をぶっ倒したバルサ。今日は全員がMVP。みんなに10点満点を差し上げたい。 |