予想通りに、フィジカルな消耗戦となった。
バルサはこの試合、以前の教訓からプレースタイルを修正してくる。積極的に前に出るのではなく、最終ラインでボールを回しつつ、一気に前線へボールを送り込むという作戦を採用してくるのだ。これは安易に中盤でボールを失うことによって、相手の高速カウンターを受けるのを阻止するためだったと、試合後にライカーは説明している。ちょっと予想外だったかもしれないのは、サラゴサもまたあえて前に出てこようとはせず、引き気味にゲームを進めていたことか。
よって前半はバルサが“持たされる”という形でボールを支配し、実はサラゴサのリズムでゲームが行われているというような展開だった。中盤ではサラゴサのプレスが速く、バルサは足元にボールを収めることができない。パスミスも多く、幾度となくボールは失ってはいるのだが、最終ラインでサラゴサの攻撃の芽も摘み取り、お互いにこれといった決め手のないままにハーフタイムへと突入した。
後半に入ると、さすがにカーサのサラゴサが前に出始めてくる。カニを中心に、ディフェンスラインの裏を突こうとする得意のプレー。けれどもマルケスの存在が際立っており、決定的なチャンスは作り出せない。前半以上にバルサのパス回しにはキレがなかったのだが、最後のところで集中を切らさなかったのが、70分を過ぎた頃から効果を現しはじめるのだ。
バルサはラルソンを投入し、どうにか状況の打開を図っていた。サラゴサは後半序盤からのプッシュが上手くいかなかったことにより、徐々に披露も見え隠れ。そしてこのゲームで唯一バルサが得たコーナーキックで、事件は起こった。スタンドのサラゴサファンがエトーに対し人種差別的な野次を行い、エトーは「これ以上プレーできない」とピッチを去ろうとしたのだった。
両チーム入り乱れての説得によってエトーは留まる決意をしたのだが、これで一番被害を被ったのはサラゴサ。再開されたコーナーキックからエヂミルソンがボレーシュートを放ち、動転していた(であろう)セラデスがバレーボールのごときブロックで一発退場、ペナルティとなるのだ。
非常にプレッシャーのかかるペナルティだったがロナルディーニョはこれを確実に決め、バルサ先制。サラゴサはこれによってぐらりと揺らぎ、その3分後、バルサはカウンターからダメ押しとなる追加点を奪い取る。右サイドを駆け上がったエトーのセンタリングを、中央のラルソンが合わせてゲット。心身ともに疲弊するゲームはこれによって、決着した。
非常に苦しいゲームを、粘り強く戦って3ポイントを獲得したことは非常に大きな意味がある。ライバルたちのメンタリティに与える影響もあるだろうし、ひょっとしたらリーガ制覇に向けての重要なポイントとなりうる勝利。ここで崩れなかったのは、さすがだといいたい。 |