なにかいつもと雰囲気の異なる、奇妙なゲームだった。
出足は、これ以上ないほどに順調。開始わずか2分、イニエスタの中央突破によって得たファールを、ロナルディーニョが完璧なフリーキックにて先制に成功するのである。この調子ならば、今日のゲームはさほど苦労することなく勝てるだろう。スタンド全体だけではなく、ピッチ上の選手たちがそう感じたとしても不思議ではない。チェルシー戦に向けエネルギーを温存できると、少なくとも観客は思っていた。しかし実際は、その逆の展開となる。
雨と寒風でスタンドのテンションも下がる中、デポルは伊達にフエラでポイントを稼いでいるチームではないことを証明する。怪我でバレロンを欠くデポルティボは、美しいフットボルなどは求めていなかった。なんでもいいから、ゴールを奪い取る。その手段として、セットプレーはとても効果的な武器といえる。
14分、デポル最初のコーナーキック。ショートコーナーからセルヒオが狙いすましたセンタリングを供給し、これをマルケスとプジョルに挟まれつつもファンマがヘッドでバシッと決めてしまうのだった。呆気なくバルサは、同点とされてしまった。
その後バルサは、決定的なチャンスを掴む。後方からのロングボール(シルビーニョ)をエリア内のエトーが頭で逆サイドのラルソンへ振り、ラルソンは自分で打ってもいいところをポストとなり、黄金ボールを走りこんできたイニエスタへ。しかしイニエスタは今回も、シュートが課題であることを露呈。ファーストコントロールを誤り、美白男はこの決定機を逸するのである。
それとは対照的に、デポルティボは次なるチャンスを逃すことはなかった。27分、ピッチ中央付近でのなんでもないフリーキック。ゴールまでは40mはあっただろうか、普通はゴールには結びつかない位置だ。しかしムニティスの蹴ったボールはバルサ守備陣の背後をとり、オフサイド気味のアンドラーデが泥臭く頭で流し込んで逆転。明らかに、集中力の欠如が生んだ失点といえよう。
しかし、この日のバルサにはツキもあった。そのすぐ後の33分、ロナルディーニョによるコーナーキック。これをエア・ラルソンが得意のヘッドでズドンと叩き込むのである。ゴール左ポスト脇にはデポルの守備者がいたのだが、ボールがあまりに速く、足元をすり抜けてゴール。前半のうちに同点に追いつけたバルサ。流れは悪くなかった。
後半はほぼ、バルサが支配していたと言っていい。デポルティボはシュートチャンスもほとんどなく、危険な匂いは漂わなかった。バルサの側にも特にこれ!という場面はなかったのだが、またもコーナーにて逆転弾を決められたので良しとするか。
それは61分、左からのコーナーキックだった。キッカーはロナルディーニョ。彼の蹴ったボールは2点目とは異なり、今度は低くスピードのあるタイプ。これがするりするりとデポル守備陣のあいだを抜け、ファーサイドにいたエトーへと届くのである。エトーは難なくちょこんと足を出し、ボールはネット天井に突き刺さった。エトーのリーガでは約2ヶ月ぶりとなるゴールによって、バルサは貴重な3ポイントを手中に収めることとなった。
全部で5つのゴールが生まれたにもかかわらず、激しい打ち合いといったムードはなし。得点はすべてセットプレーから。なんとも掴みようのない、不思議なゲームだった。重要なのは、それでもバルサが勝利したこと。また一歩、カンペオンはこちらに近づいてきた。 |