この1年で大きく成長したバルサが、完全にチェルシーを凌駕したゲーム。
ゲーム内容は極めて戦術的だった。ドログバ、ロッベン、ダフといったところを起用し、十八番であるカウンターアタックにて勝機を見出そうとするチェルシーと、それをボールの出所から防ごうとするバルサ。モウリーニョはおそらく、バルサはもっと前掛りにくるであろうと予想していたに違いない。しかしいつもよりも守りを意識したバルサの中盤のプレスは素晴らしく速く、早めに攻撃の芽を摘まれるチェルシーはカウンターを仕掛けることもできない。引いて守るわけではない、攻撃的な守備。これがいまのバルサの成熟度を示している。無理をせずともゲームをコントロールする術を得た、ライカーの教え子たち。
第1戦の劣勢を跳ね返すため、チェルシーは早い時間帯でのゴールが必要だったのだが、バルサのプレスによってプランを狂わされたか、粘り強くいくことを選択したような雰囲気。あるいはバルサのミスを待つ以外、彼らにオプションはなかったということか。
そんななか、バルサにとっては不運な出来事が発生する。25分、ロンドンでチェルシーを翻弄したメッシーが左脚を傷め、負傷交代となるのである。彼の代わりには、頼れる男ラルソンが入った。ただしチェルスキーから絶対にゴールを奪わなければならない状況ではないので、戦況に大きな変化はない。チーム全体でプレスをかけ、チャンスとあればロナルディーニョが個人技で打開を図る。今日のバルサには、それで十分だった。
前半、チェルシーの得点機は2回ほど。ロッベンの低いミドルシュートと、セットプレーからのダフのトリックシュート。前者はバルデスがガッチリ抑え、後者はバーのわずか上方ということで、バルセロニスタが冷や汗をかくということはなかった。
後半、チェルシーは積極的な出足を見せる。最低2点が必要であるから当然なのだが、その反抗も長くは続かなかった。前半同様にバルサが圧力をかけると、次第に彼らの勢いも減速。モウリーニョは58分になってようやくグジョンセンとクレスポを投入、状況の打開を図る。そしてその数分後、右サイドを突破したジョー・コールのクロスに対し、ニアに飛び込むクレスポ。彼のシュートはわずかにポスト右にそれ、ゴールならず。これがチェルシーの最も決定的なチャンスだった。
バルサとしては、そのまま0-0でも勝ち抜けは決まる。しかしクラブのアイデンティティとして、その抜け方は素直に喜べない。やはり気持ちよく勝利し、1/4ファイナル進出を決めてほしいとバルセロニスタなら誰でも思うところだ。そこでファンの期待に応えてくれるのが、やはりロナルディーニョである。
78分、エリア正面35mほどのところから、ドリブルによって中央突破を試みるクラック。前方にはチェルスキー自慢のデフェンサたちが4人しっかりと構えており、なおかつテリーは強烈なタックルをお見舞いしようと突っ込んできていた。しかしテリーは逆にロニーのドリブルによって吹き飛ばされ、ブラジリアン・ギガクラックはそのまま守備ラインを突破してシュート。豪快なシュートはゴール右隅に突き刺さり、カンプノウはフィエスタとなった。
あとはエトーさんの近距離からのシュートが入っていれば完璧だったのだが、角度がなかったこともあり、惜しくもポストをかすめるだけでゴールならず。そしてそのまま気持ちよくゲームが終わろうとしている時、審判からチェルシーにプレゼントが進呈された。
92分、どうみてもオフサイドであるはずのテリーの抜け出しが“合法”とみなされ、さらにボールへいっていたジオのスライディングがファールの判定。そんなアホな、といいたくなるようなペナルティだった。これをランパーが決めて1-1。勝負には影響のないプレーだから良かったものの、決勝点になる状況だったらシャレにならない。とにもかくにもチェルシーは審判からの贈り物によってどうにか1点を返し、見かけ上は体裁を保った。よかったね、モウリーニョさん。しかしゲームを観たものにとっては、この2チームの優劣は歴然。これでもう、来年のリベンジは受け付けません。だって、どっちが強いかは分かっちゃいましたから。 |