常にバルサが主導権を握りながらも、苦しい展開のゲーム。
過去3試合でゴール日照りが続いていたバルサ。この日の目標は早い時間帯に先制点をあげ、セミファイナル進出へ大きく近づくとともにゴールへの強迫観念から解放されることにあった。
その絶好の機会は開始早々4分に訪れる。バン・ボメルのクロスをペティが手で止めたことで、ペナルティを得るのである。キッカーはロナルディーニョ。いつもならなんなく決めてくれる彼だったが、さすがにプレッシャーがかかるのか。天才クラックといえども、万能ではない。ロニーのシュートはGKモレットに阻まれ、どよめくカンプノウ。
けれども19分、ロナルディーニョはその失敗を帳消しにするゴールを叩き込む。この日、エトーの動きは素晴らしかった。前線から精力的にプレスを与え、ベンフィカ守備陣の焦りを誘う。先制点もそんなエトーの、献身的な動きから。プレスによってボールを奪ったエトーがエリア深く切れ込んでいき、グラウンダーの鋭いクロスを供給。これをロナルディーニョが丁寧にシュート、ついにモレットの守るゴールは陥落した。
ゲーム前の宣告どおり、クーマン・ベンフィカはカウンター戦法に的を絞っていた。数少ない機会にすべてを賭けるというやり方だが、モレットの好守にも支えられ、それは成功していたともいえる。ロニーのゴールによって待望の先制点を奪ったバルサではあったが、ベンフィカに1点入れられれば、状況は一変する。勝利を確実にするためには、2点目が必須。しかしその追加点が非常に遠く、ベンフィカにも常にチャンスはあった。
ベンフィカにとっての最大の好機は60分。カウンターから右サイドを突破したミッコリが、中央のシマオに絶妙のパスを送る。シマオはウラゲールとプジョルを振り切りバルデスと1対1に。絶体絶命バルサ、しかしシマオのシュートはポストのわずか外に逸れていった。カンプノウが最も肝を冷やした瞬間だった。あとはセットプレーからのカラゴニスのロングシュート。バルデスの弾いたボールが相手の前に転がっていたら・・・やばかった。
そんなわけで、バルサはリードしつつも安全圏にいたわけではない。1-0の状況では1点入れられると逆に追い込まれるわけで、後半途中からはその可能性は常に残されていた。ベンフィカの攻撃の多くはプジョルを中心とした守備ラインによって無難に処理されてはいたが、中盤でボールを奪われてのカウンターというシーンも幾度かあったからだ。どうしても2点目が欲しい。チャンピオンズは最後の笛が吹かれるまで、何が起こるか分からない。そんなドラマはこれまで、イヤというほど目にしてきているのだ。
そんなバルセロニスタを一気に楽にしてくれたのが、89分のエトーのゴールだった。ロナルディーニョのパスを受けたベレッティがワンタッチで浮き球のクロスを供給。エトーはこれを完璧な胸トラップで処理し、ひと呼吸おいてからハーフボレー気味にシュート!これが見事ベンフィカのネットを揺らし、勝ち抜けを確実なものとした。
こうしてバルサは苦しいゲームながらもベンフィカを撃破。ミランの待つセミファイナルへと、駒を進めることとなった。まず初戦はサン・シーロ。ヒリヒリする展開が両チームを待ち受けているだろう。 |