非常に拮抗した、予想通りの厳しいゲーム。
試合序盤は、ミランペースだった。バルサがピンチに陥ったのは、14分過ぎ。ジラルディーノがエリア内でマルケスとウラゲールの守りを突破し、至近距離からシュートを放つ。しかしこれは左ポストを直撃し、バルサは命拾いをした。さらにその1分後、セードルフのクロスに飛び込んだシェブチェンコが豪快なヘッド。これはビクトール・バルデスの好セーブによって、事なきを得た。いずれもネットを揺らしていてもおかしくなかった場面。運はバルサにあったといえる。
このゲーム、ミランはインサーギをインフルエンザで欠いていた。バルサとしては、非常にありがたい話だ。となれば、ジラルディーノも危険ではあるものの、マークすべきはシェブチェンコ。彼を封じ込めるという重要な任務をライカーが託したのは、当然カピタン・プジョルだった。そしてプジョルは、ほぼ完璧に指揮官の期待に応える。彼が絶えずマークすることによって、ミランは効果的なボールをシェバまで送り届けることができない。欧州随一のデランテーロといえども、プジョルの守りをかいくぐるのは容易ではないのだ。
ただ残念だったことは、34分にプジョルにカードをもらう羽目になってしまったこと。前に出ていたマルケスがシェブチェンコにボールを奪われ、プジョルは攻撃の芽を摘むためにテクニカルなファールを犯さざるを得なくなった。これでプジョルはもし次の第2戦でもう1枚カードをもらえば、決勝戦への出場資格を失うことになる。
そしてもうひとり、ミランのキーマンといえばカカーである。前線へのパス出し、さらに単独での突破など攻撃面でオプションを持つ彼を止めることは、ミランを機能させない上で重要。そこでカカー封じを命じられたのが、ブラジル代表の先輩でもあるエヂミルソン。常にカカーの動きに気を配り、徹底マーク。後半はさすがに体力の限界から振り切られかける場面もあったが、こちらもほぼ完璧に仕事を全うしてくれた。これによってイニエスタが、よりゲームメイクに重点を置けるようになったのも大きい。デコの不在をまったく感じさせないイニエスタの好守における働きは、文句の付けようがなかった。
そういったことで、運と努力によってミランの攻勢をしのいだバルサは、前半の途中から徐々にリズムを掴み始めていく。特に後半、ロナルディーニョが存在感を発揮しだしてからは、バルサペース。乗ってきたロニーを止めることは、ミランといえども困難を極める。
スコアが動いたのは56分。主役はロナルディーニョとジュリだった。ロニーがボールを受け取った位置は、エリアから遠く離れていた。目の前には、“ガッツ”ガットゥーソ。その後ろにもずらりと、鉄壁のミラニスタたちが控えている。しかしロニーはガッツプレスもなんのその、ボールを巧みにコントロールすると、反転しながら浮き球のスルーパス。これにジュリが抜け出し、ワンバウンドしたボールを豪快に左足のボレーでネットに突き刺した。
ガットゥーソが足を滑らせるほどの切れ味鋭いロナルディーニョのステップと、絶妙な力加減によるパス。そしてネスタとカラーゼを振り切ったジュリの瞬発力、思い切りのよさ。シュートのコースもまさにピンポイントで、あの弾道、スピードでなければゴールには至ってなかっただろう。
それからしばらくは、バルサの時間。ミランは前に出ざるを得なくなり、バルサはボールをコントロールしながらカウンターを狙う。その中でロナルディーニョのドリブルシュートがもし決まっていれば、バルサは非常に大きなアドバンテージを得ていたのだが、これは惜しくも左ポスト直撃。ミランにも運はあったし、勝負の行方はまだ分からなくなった。しかしながら、あのミランを相手にロンドをやってのけるなんてのはバルサ以外にない。実に爽快なシーンだった。
とはいってもミランが簡単に勝たしてくれるはずもなく、ゲームの終盤はややミランペース。ウラゲールが太ももを痛めたり、疲労による若干のチェックの緩みなどで、バルサが攻め込まれる場面は増えていた。しかし決して焦ることなく、落ち着いて対処できていたのはチームとしての成長の証。チャンピオンズのセミファイナルで、ミランを相手にあのゲーム運びができたというのは、大いに価値のあることだ。
そんなわけで、決戦の第一幕はバルサの勝利。ただしリードはたったの1点であり、些細なエラーですべては水の泡となりかねない。今回のゲームも、ほんの少しの違いで結果は変わっていただろう。カンプノウでの第2戦も、スペクタクルなゲームとなるのは間違いない。 |