カンプノウでの今季最終戦。なんと87,952人という、今季2番目となる観客の入りがあった。それだけファンが今シーズンのバルサには感動しているという証明。
リーガ制覇を決めたバルサにとっては、これからのゲームはすべて“消化試合”であり、“パリへの準備”であることはどうしようもない事実。しかし応援してくれたファンに対して失礼なことは出来ないと、フィエスタボケもなく選手たちは真剣にプレーに取り組んでいた。それこそがプロフェッショナル精神だ。
ジョルケラはことごとく敵のシュートを止め、両ラテラルはサボることなく攻め上がり、プジョルとウラゲールは集中を切らすことはない。チャビ、エヂミルソン、デコらも労力を惜しまず走り、ロニーのパス、ドリブルは今日も切れていた。エトーはゴールに燃えていたし、ラルソンの裏を突く動きはいうまでもない。優勝が決まってからも3ポイントを貪欲に狙う姿勢、これがバルサの強さだ。
とはいってもこの日の目標はファンにいいイメージを残すこと、本拠地最終戦を楽しんで帰ってもらうこと、優勝報告のフィエスタを勝利で飾ること、そしてエトーにゴールを決めさせること。いわゆる生死や人生のかかった大一番では決してない。そんなわけで、緊張感ピリピリの集中力マックスなプレーを求めるのは酷。どうしても若干ゴールは遠くなる。
スタジアムにいるいないに限らず、バルセロニスタの希望はエトーに得点を奪ってもらうことだった。バレンシアのビジャが猛追を仕掛けてくる状況で、残り試合数はこちらが1つ多いとはいえ、可能な限りリードを広げておきたいエトー。しかしその願いも届かなかった。あと一歩のところまで行くシーンは何度かあったが、締めが上手くいかない。結局ビジャがまたもやゴールを決めたことで、二人の差はまたも1ゴールと縮まっている。
一方のエスパニョールだが、彼らは本当ならばもっと死ぬ気で戦わなければならなかった。バルサのリズムがそれほどではなかったために、彼らはチャンスは掴んでいた。シュートの数だけでいえば、バルサも上回っている。けれども執念の感じられない淡白なプレーにより、ジョルケラが危機に陥った場面は多くない。特になにをやっていたのかよく分からない中盤。降格がかかっているのだから、もっと気持ちをこめてプレーしなくては。デラ・ペーニャの不在が大きく感じられた。
ゲームは18分に動いた。ロナルディーニョのオシャレなスルーパスに抜け出したエトーのライン際からのセンタリングが、DFジャルケの胸に当たってオウンゴール。今のバルサには1点のリードをカンペオン的に守りきるというプレーが可能であるからして、この時点でエスパニョールは非常に厳しい状況に追い込まれる。しかし鬼気迫るプレーをエスパニョールが見せなかったことで、ゲームはフワフワと進んでいくことになる。
さらに51分、デコの見事なワンタッチのスルーパスでラルソンがオフサイドラインを突破し、GKと1対1になってシュート。これは惜しくも弾かれるのだが、詰めていたロナルディーニョが転がりながらもどうにか防ごうとするGKをかわし、トドメとなる2点目を叩き込んだ。この日のエスパニョールに、2点差をどうにかする能力はない。試合の行方は完全に決着した。
となればあとは、予定通りに“儀式”をこなしていくだけ。今季でバルサを去る予定になっている2人の選手、ラルソンとガブリへの最後のねぎらいを与える場となる。まずはガブリ。先発復帰したチャビに替わってガブリがピッチに入ると、スタンドは心からの拍手をプレゼント。続いてラルソンがエスケーロに替わってベンチに下がる時にも、カンプノウは盛大なオベーションに包まれることになった。これまでバルサのためにアリガトウ!これからのフットボル人生に幸ありますように!来季から彼らの姿を見れなくなると思うと、寂しくなる。
試合終了後、同じくこの試合が審判として最後の仕事となるエスキーナス・トーレスに、エトーはシャツのプレゼントをしたという。このあたり、なにげにステキ。 |