ピリッとしない前半のバルサと、スパイスの効いた後半のバルサと。
前半戦のカギとなるゲームだけあり、試合への入り方は両チームともに慎重。バレンシアはいつものように守備的で、よくバルサを研究していた。バルサは最終ライン手前まではパスを展開できるのだが、そこから先が思うように動かせない。縦への突破がさせてもらえず、意外性のある攻めによる抜け出しが出来ないので、シュートまでたどり着けない。中盤からの横パス(あるいは苦しまぎれの縦パス)をカットされ、バレンシアの素早いカウンターを食らう。そういったパターンでゲームは進んでいく。
立ち上がりの中盤は、コウモリ軍団のエドゥとアルベルダがコントロールしていた。そして16分、速いパス交換によって右サイドで展開され、オーバーラップしたミゲルがバルデスと最終ラインの間を通す鋭いセンタリングを供給。これにビジャが気迫で滑り込み、バルサのゴールネットは揺らされた。バルデスは身体を盾にして防ごうと試みたものの、ビジャの執念が勝利した。
堅守を誇るバレンシアに、1点を先行された。これはかなり気合を入れなければならない状況ではあるのだが、バルサのエンジンはいっこうにかからない。誰がどう悪いというわけではなく、全体としてのリズムが非常に悪い。幸いだったのは、前半終了間際のビジャのシュートがポストに救われたということ。これが入っていれば、おそらくやられていたのではなかろうか。
しかしハーフタイム明けからイニエスタを投入することで(エヂミルソンと交代)、バルサは別のチームへと変貌する。美白カンテラの効果は、すぐさま現れた。たった一人の選手によって、これほどまでにゲームのリズムが変わるのかというくらいの違いよう。ピボッテの位置に下がったチャビがプレスから解放され、イニエスタが前線へ積極的に飛び出していく。同点の瞬間は、後半4分に訪れた。
ジオの上がりによってプレスが弱まったロナルディーニョから、中央へとクロスが送られる。エトーはこれを頭で落とし、そのボールを走りこんできたイニエスタがガツンと押し込んだのだった。今季のイニエスタは、これまでと異なってシュートが入る。さらに進化を遂げる色白セントロカンピスタ。
後半開始直後に同点に追いついたことで、バルサは波に乗る。ボールはダイナミックにピッチを駆け巡り、両ラテラルの攻撃参加も頻繁に。対応に追われるバレンシアは防戦一方となり、中盤でのプレスを失ったことで、バルサのパス回しをどうすることもできなくなっていた。もはや彼らの狙いは一つ、引分けを手土産にカンプノウを後にすることだ。
結論からいって、バレンシアの願いは成就する。バルサはあと一歩まで迫りながらも、コウモリディフェンスを崩しきることができなかった。カニさんも健在だった。優勢勝ちがあるなら、間違いなくバルサ。しかしゴールラインを割らなければ、どれだけ押し込んでいても結果は同じだ。またしてもバレンシアにポイントを持って帰られてしまった。メスタージャでお返しをするしかない。今回は、(それでも)首位に立てたことで満足とするしかないか。
そしてもうひとつ、忘れてはならない出来事を一つ。そう、サビオラの途中出場である。彼の登場に、大いに沸きあがるカンプノウ。残り時間わずかながらも、引き分けという状況でサビオラを起用したライカーの心意気にまずは感心。期待に応え、持ち前の飛び出しであわやゴールというところまでいったコネッホにも天晴れ。やはりサビオラは、普通にオプションとして使える。今後の起用法に注目。
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