カンペオンとしての実力を発揮できず、完敗。
前半は、拮抗した展開となっていた。バルサとチェルシー、自他共に認める強豪同士であり、リスペクトしあっているチーム同士。無理をして強引に仕掛けるのではなく、様子を見ながらじりじりと相手のツボを攻めていく、非常に戦術的な展開。ポイントとなる(はずだった)のは、サイド攻撃だった。
シェブチェンコを獲得したことにより、チェルシーは今季システムを変更していた。それはロッベンを代表とするサイドアタックをとりあえずは封印したということであり、バルサがつけ込むとすれば、ここは見逃せない。しかし今回のバルサは、中央にしか目が行かない。相手のカウンターを警戒しすぎたのか、ジオもサンブロッタもオーバーラップを仕掛ける場面が皆無。となると、中央での潰しあいがメインとなり、エッシェンが幅を利かせることになる。
チェルシー前半最大のチャンスは17分。エッシェンのボールを受けたドログバが、巧みなトラップで守備ラインの裏を突く。そしてシェブチェンコへスルーパス。これをザンブロッタがかろうじてカットし、こぼれ球を仕留めようとしたシェバを、マルケスがギリギリのスライディングでカバーした。
対するバルサは30分、メッシ・ロニー・メッシ・デコ・チャビとワンタッチでボールを回し、最後はチャビが左足で際どいシュートを放つのだが、GKイラリオのセーブでゴールならず。このゲームで、一番バルサらしかったシーンだろう。その後、両チームともにちょっとしたチャンスを演出しながら、前半は無得点のまま終了。
そして後半、前半のように慎重に行きながら、プレスが弱まった隙を突いてゴールを奪いたかったバルサだが、その目論見はいきなり崩される。47分、青油のクラックが違いを見せてくれたのだ。
アシュリー・コールからのボールをゴール正面で受けたドログバが、マークについていたマルケスとプジョルを華麗なヒールコントロールでかわし、素早く身を翻してゴール右隅に弾丸シュート。クラックにしか不可能な超ゴラッソにより、チェルシーが先制に成功した。
恐れていた先制点を奪われたことで、バルサはかなり追い込まれる。まず必要なのは、ゲームのリズムを変えること。そこでライカーが選択したのは、これまでに試したことのない3バックを、いきなりここで導入するというギャンブルだった。ジオに替えて、イニエスタを投入。これでシステムは、クライフ時代によく見られたような、3-4-3へと変化した。
しかしこの作戦は、失敗に終わる。慣れない戦術に選手たちは戸惑い、バルサの生命線ともいえる組織ブロックが崩れるのだ。攻守のバランスは悪くなり、グジョンセンに替えてジュリを投入したことで、右サイド偏重に。しかも右を広く使って相手を崩すでもなく、中央右寄りにあらゆる攻撃が集中しているといった様相。それではチェルシーの鉄壁は崩せない。
バルサは誰も“ここだ”というポジションを見つけられず、チェルシーはバランスの悪化によって生まれた穴を、カウンターで狙っていく。エッシェン、あるいはシェブチェンコが決定的な場面を作っていただけに、1-0で済んだのはバルサにとっては幸運だったといえよう。
他会場ではブレーメンがきっちりとレフスキを下しているため、バルサにはもう一切の余裕はなくなった。グループリーグを勝ち抜けるには、残り3戦を全勝するしかない。エトーの不在をこれほどまでに重く感じたこともない試合だった。 |