今シーズン、どうも立ち上がりに集中力のなさが感じられることの多かったバルサだったが、今回はその課題は克服できていた。積極的にプレスを仕掛け、ボールの素早い展開を心がけることによってゲームを能動的に支配し、ワンタッチフットボルにサラゴサはなかなかついてはいけない。それどころか、序盤15分のサラゴサには、シュートに持ち込める雰囲気すら漂っていなかった。
バルサは開始3分のデコとのワンツーからのイニエスタのシュート、12分のグジョンセンのエリアに切れ込んでのシュートと惜しいチャンスを掴むが、ゴールならず。攻勢だった15分のうちに先制点を奪っておけなかったことが、残念ではあった。
しかしフットボルとは分からないものである。サラゴサが初めて掴んだチャンス、16分のコーナーで、彼らはまんまと先制に成功するのだ。完全にマークを外れたガブリエル・ミリートが、するりと侵入してきて余裕の左足。圧倒的にゲームを支配していたのに、奪われたリード。さらに21分にメッシが、27分にはエヂミルソンが負傷交代するという悲運が重なり、どことなく嫌な空気も漂った。
それを振り払ったのは、ロナルディーニョだった。30分の右コーナー、デコのセンタリングを叩きつけるヘディングで決めたブラジリアン・クラック。試合は振り出しに戻り、そのままハーフタイムへと流れ込んでいく。
後半、ペースはどちらかというとサラゴサ寄りだった。カウンターに狙いを絞るサラゴサに対し、バルサは予期せぬ負傷者によって、方向性がややぼんやりした感じ。そんな試合を激しく揺さぶったのは、70分に始まる主審のカードショーだった。
線審の忠言によってモッタが謎の一発退場となると、様相は一変。その帳尻合わせか、サビオラのカウンターを阻止したミリート弟がこれまた一発赤紙。その後は主審イトゥラルデ・ゴンサレスの神経は完全に舞い上がり、カードカードの大放出。ちょっとしたファールにもカード、そんな展開となっていく。
両チームとも中盤の人数を減らし、ボールは落ち着きなく両陣営間を行き来する。ヒートアップするスタジアム。「こんな試合は、絶対に勝つしかない!」。しかしまともなチャンスは、なかなかに作れず、時間だけが過ぎていく。そんな中、輝きを見せたのがロナルディーニョだった。残り時間もわずかとなった85分、エリア左寄りからのフリーキック。これをギガクラックはゴール右角に、直接叩き込んでくれたのだ。感情を爆発させるロニーとスタンド。ようやく、待ちに待った瞬間が訪れた!
しかし試合はそれだけでは終わらず、あわや同点かというエベルトンのヘッドをバルデスが弾き返したり、あわやハットトリックかというロナルディーニョのフリーキックがクロスバーに阻まれたりと、最後まで見所満載。ロニーキックのこぼれ球は、サビオラが頭で押し込むというオマケ付だった。オフサイド気味だったが、笛は鳴らなかったので合法的ゴール。めでたしめでたし、か。
怪我人の多発(特にメッシ!)が影を落とした試合だが、土壇場で勝利をモノにできたこと、選手たちが執念を見せたこと、頼れるクラックがチームを救ったことが、光をもたらしてくれた。セビージャが引き分けたことにより、1週間で首位復帰。
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