バルサとロニーの完全復活といってもいい試合。
チームはもっと成長せねば、という前日のライカー発言に応え、この日のバルサは最高のパフォーマンスを披露する。ここ数試合、復活の兆候を見せていたチームが、まさにカンペオンとして甦ったことを証明したゲームといえるだろう。ビジャレアルの仕掛ける中盤の攻防にも一切ひるむことなく、果敢にボールに圧力をかけ、相手陣内で奪取する場面もしばしば。ボールを奪えば少ないタッチ数でパスを交換し、敵エリアに迫る。自分たちのリズムでゲームをコントロールするという、過去2シーズンに見せていた“らしい”プレーが、本格的に復活してきた。
序盤は時折、裏のスペースを突かれることはあったが、それは今回のバルサが、高い守備ラインを取り戻したという証でもある。深く守って、慎重すぎるほどに水平方向のパスを繰り返すというシーンはほとんど見られず、縦への積極的な展開がほとんどだったことからも、チームが自信を深めているのが覗える。久々に出場のチュラムも、上手くこのスタイルに適応できていた。
中盤はエヂミルソンがどしっと居座り、デコとイニエスタが縦横無尽に駆け回る。この2人の働きは本当に素晴らしく、彼らの存在によって、バルサは常にビジャレアルの先手を取ることが可能になっていた。攻守両面における貢献度は絶大。現時点で、世界最高の中盤といっても過言ではない。
さて試合は34分、ついに動きをみせる。ロナルディーニョの深い縦パスをエリア内側で受けたグジョンセンが、すばやいターンで身を翻したところ、DFシガンによって倒され、ペナルティを得るのだ。これをロナルディーニョがきっちり決めて、バルサ先制。30分ころから掴んでいた流れを、これで完全に引き寄せる形となった。ギアを上げるバルサにイエロー・サブマリンは付いてくることが出来ず、ゴールショーへとなだれ込んでいくのである。
前半はなんとか1失点でしのいだビジャレアルだったが、後半になってもバルサの勢いは衰えない。圧倒的にボールを支配し、ゲームも支配するアスルグラーナ。そして54分、エヂミルソンのドリブル突破によって得たファール。ロニーのキックは壁に阻まれるも、こぼれ球をイニエスタが右へ展開し、センタリング。これをファーポストのグジョンセンが、フリーで頭で決めた。2-0となり、完全に勝負あり。しかしバルサは、攻撃の手を緩めない。
70分にはエヂミルソンのパスを受け、エリア内で粘りに粘ったザンブロッタがふわっとしたクロスを供給。これを後ろから走りこんできたイニエスタが、ドフリー状態から豪快にダイビングボレーで決め、リードは3点へと広がった。
しかしビジャレアルもうな垂れてしまうことなく、56分のフォルランのカウンター、そして71分の波状攻撃と意地を見せる。特に71分の連続攻撃は迫力があり、ザンブロッタとバルデスの2つの身体を張った守りがなければ、ネットは揺らされていただろう。
だが、最後に超絶プレーにて主役の座をもぎ取っていったのは、ブラジル製ギガクラックだった。チャビからの浮き球スルーパスに反応して抜け出し、胸トラップによってくるりと身を反転させると、そのままなんと、右足のチレーナでゴールを決めてしまったのだ!!なんという変態プレー。なんというイマジネーション。
さらにこのゴールに至るまで、41分25秒から42分25秒の1分間、バルサがひたすらにボールを回していたことも見逃せない。ビジャレアルのカウンターをカットしてから、バルサは(おそらく)15本のパスをつなぎ、3本のシュートを放ち、このゴールを誕生させているのだ。チームとしてのボール展開と、クラックのスーパー個人技の融合によるゴール。それだけに尚のこと、完全復活が印象付けられている。
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