前半の20分でブレーメンを圧倒したバルサが、リードを守りきった。
チャンピオンズで生き残るためには、なにがなんでも勝利しかないこの試合。カンプノウで戦えるという地の利を、バルサはスタジアム全体で存分に活かしきったといえよう。スタンドからの声援はいつになく熱く、盛大な拍手と掛け声でバルサを後押しし、厳しい口笛でブレーメンに圧力をかけた。
このファンからの励ましに、選手たちの気迫も違っていた。各ラインが協力してプレスをかけ、中盤を制圧。ボールを奪い取るとすばやいパス展開でゲルマンを翻弄し、エリアへと迫って行った。そのあまりのスピードに、ブレーメンは自由にボールをコントロールすることができない。当然守備組織も整わず、バルサの前にはありがたいスペースがいくつも用意されることになった。
特にバルサの右サイド、ジュリの前方にはスペースがあった。序盤のバルサは、このウォメの背後を徹底的に突いていく。ロナルディーニョの先制点も、その5分後のグジョンセンの追加点も、さらにその後のスペクタクルなカウンターアタックも、いずれも狙いはこのサイド。では、それぞれのプレーを少し詳しく見てみよう。
まずは13分のロニーの先制点。これはセットプレーによるものだった。エリア正面右でロナルディーニョが倒されて得たフリーキック。キッカーはもちろんブラジリアン・クラックであり、彼はここで意表をつき、グラウンダーの鋭いシュートを放つのだ。ブレーメンの壁はジャンプし、その足下をなんの障害もなくすり抜けていくボール。天才の発想力により、バルサ理想的な時間帯に先制点ゲット。
さらにバルサの攻勢は続く。18分、切れ味あるカウンターから、ロナルディーニョがウォメの後方に絶妙なパスを送り込む。これにジュリが反応し、完全に裏をとった後にエリア中央に丁寧なアシストパス。そしてオフサイドラインぎりぎりのところからグジョンセンが抜け出し、ずどんとネットを揺らして見せたのだった。
瞬く間に2点をリードしたことで、カンプノウのボルテージは最高潮となる。さらに34分、記録にはならなかったものの、記憶には残ってしまうであろう美しいプレーも誕生。デコの完璧なドリブルにより始まったカウンターから、ボールは右サイドのジュリ、そしてグジョンセンへ。グッディは「そんなこともできたの?」というような細かいボールタッチによって守備陣をするりとかわし、シュートを放つ。これは惜しくも右ポストに阻まれるものの、ボールはゴール正面、超フリーのジュリの元へと跳ね返った。あとはちょこんと流し込むだけ。しかしどうしたことか、ジュリのシュートはポスト左へと外れてしまうのだった。
ジュリはその前にも1つ、惜しいチャンスを活用できずにいた。2点目のアシストは文句ないプレーだったが、あともう1つネットを揺らせていたら、そこでゲームはほぼ決まっていただろう。しかしそうはならなかったがゆえに、後半バルサはブレーメンの反攻に苦しむことになる。
同点でグループ勝ち抜けが決まるブレーメンは、1点返せばどうなるかは分からないという強い信念の下、最後までバルサゴールを狙ってくる。後半、明らかに前半の勢いがなくなったバルサに対し、圧力を強めるゲルマンの勇者たち。中盤でゲームを作れなくなったバルサのラインは低くなり、60分ころまでは防戦一方という苦しい展開となる。これを救ったのは、危なっかしいモッタに替わってピッチに立ったチュラムだった。
ベテランフランス人が最終ラインに入ったことによって、バルサは劇的に安定感を取り戻す。ラインは高くなり、中盤でのプレスも効くようになっていた。しかしブレーメンがそれで諦めたわけではなく、後半のチャンスの数は彼らのほうが上。あわやという場面もいくつか演出したのだが、バルデスをはじめとする守備陣を崩しきることはできなかった。
そして試合終了の笛はなり、バルサが1/8ファイナル進出の切符を獲得。最後までゲルマン魂をみせてくれたブレーメンも、敵ながら天晴れだった。後半はあからさまにアクセルを緩めていたものの、やっぱり主役はロナルディーニョだったね、という今季最初の"決勝戦"。やっぱりあんたはすごい。ゴールやアシストだけではなく、チームを引っ張ろうとするその気迫に、今回も痺れさせられました。グラシアス、ロニー!
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