ライカーの言葉通り、プレー内容はかなり改善されていた。
1週間前、3-0で勝利しながらも、ふがいないパフォーマンスにスタンドからの口笛が鳴り響いたカンプノウ。リーガ後半戦スタートとなるセルタ戦は、結果とともに内容の向上が求められるゲームだった。3ポイントは獲って当たり前。あとはファンにどれだけ希望を与えられるかに注目が集まっていた。
ベティス戦の後半、バルサは若干ながら復活の兆候を示していた。そしてこの試合。キックオフ直後から、選手たちは積極的にボールに絡んでいき、セルタに圧力をかけていく。先手を打つことでパスコースも広がり、パス交換もスムーズになる。それはゴールチャンスにも結びついていく。プレスによってゲームをコントロールし、相手陣内でゲームを進めるというバルサのプレースタイルが、特に前半は甦っていた。
昨日のチームは、まずポジションの取り方がよくなっていた。約束事が守られ、グループとして頭を使ったプレスによって相手のボールを奪い取る。無駄に走り回るのではなく、ライン間のプレスによって、セルタの攻撃の芽はほぼ完全に摘み取られていった。よって、前半にはピンチらしきものは発生せず。圧倒的にバルサペースだったといえる。
この日はジオの攻め上がりが効いていて、20分にもチャビの惜しいシュートへとつながっていたのだが、サビオラの先制点も同じような形。34分、ハーフライン後ろからのチャビの見事なスペースを突くロングパスにジオが抜け出し、上げたクロスに超フリーのコネッホのヘッド。さすがのGKピントもどうしようもなく、バルサは奪うべくして先制点をゲットした。
そして後半、バルサはリードを守りたいという意識が高まったのか、慎重なプレーを優先する時間帯が出てくる。前半に比べ守備的になり、それによってセルタの攻め上がりを許すようになるのだ。ポジショニングやパスも、不安定になっていた。このあたり、まだ復活し切れていないというところ。いずれにせよセルタに攻撃を許したことでエリアに迫られる回数も増え、"事件"も発生する。
67分、サイドから切れ込んでくるアンヘルに対し、ジオがスライディング。ここにさらにウラゲールも交錯。確かにエリア内ではあったが、普通はファールにはならないようなプレーだ。しかし審判はなぜか笛を吹き、セルタの選手もビックリ。このペナルティをネネーがきっちりと決め、バルサは同点に追いつかれてしまうのだ。
意気あがるセルタは前がかりになり、ラインは高くなっていた。そこでライカーはジュリをピッチに送り込む。これは効果を発揮し、バルサもまた相手ゴールに近くなっていった。そして疑惑のペナルティを与えた審判の頭には埋め合わせしようという意識が働き、77分、今度はバルサに存在しないペナルティが。笛の対象となったジオはエリアのわずか外で倒れていたし、よく見ると足もかかっていない。この"埋め合わせ"のペナルティはロナルディーニョがきっちり決め、バルサは再びリードを手に入れた。
この後は両チームが押し合う展開になるのだが、ひとつだけ忘れてはならないのは、81分、ピッチ中央から立てパス一閃、ジオの背後のネネーにボールを送られ、あわやゴールというシュートをバルデスがセーブしているところだ。これが決まっていれば、試合の展開は分からなかった。地味ながらもチームを救った守護神に乾杯。
試合を気持ちよく終わらせてくれたのは、ペナルティのプレゼント合戦の記憶を脳裏へと消し去る、ジュリの追加点。90分、前がかりになっているセルタに対し、ハーフライン後ろからデコがスルーパスを流し込み、抜け出したジュリがピントと1対1に。そして冷静な股抜きシュートによって、3点目をゲットしたのだ。起爆剤として投入され、しっかりと役割を果たしたジュリ。あっぱれ。
こうして、リアクションを示すべきゲームで選手たちは結果とともに内容の改善を見せ、スタンドからの拍手を勝ち取った。復活の兆しは十分。あとは次の2、3試合に同じように勝利できれば、フォームを取り戻したといっていいだろう。その頃にはエトーとメッシも戻ってくる。ようやく、バルサにとっての2007年の幕開けがきたような気がする。
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