これぞまさしく、完勝。輝きを取り戻したロナルディーニョが、チームを牽引した。
エトーとメッシの復帰に大きな注目が集まっていたこのゲーム、主役の座をかっさらっていったのは、こちらも足首のダメージから復帰したばかりのメガクラック、ロナルディーニョだった。2つのゴラッソを決めただけではなく、動きの豊富さ、テクニック、発する闘志、そのどれもが本来の彼にだいぶ近づいてきてる感じ。それに引っ張られるかのように、チーム全体のパフォーマンスもまた、かつてのそれに迫りつつある感はある。
ゲームは序盤から、バルサのペースだった。ラシンはカウンターによってバルサエリアに接近することはあっても、攻撃の核であるムニティス、ジギッチを欠いたこともあり、パンチ力がない。攻撃はすべてプジョル、エヂミルソン、マルケスを中心とした網に絡めとられ、バルデスの守るゴールを脅かすには至らない。プレスもさほど積極的ではなく、バルサは中盤を含めかなり自由にボールを扱うことが出来ていた。ただ、ゴール前での決め手だけが若干不足。
しかしどんなゲームでもピンチというのは来るもので、24分、ベレッティの多少強引なチェックがファールと判定され、ペナルティ宣告の笛。試合を支配下に置きながら、リードを奪われかねないという、まさかの場面が訪れる。けれども今夜の第2の主役、バルデスは落ち着いていた。オーラでキッカーのガライを飲み込み、見事にペナルティを阻止。これがチームのスピリットに火をつけ、さらにバルサの勢いは増していくことになる。今季のバルデスは、かなり頼れる存在。でも世間の認知度は低い。
もうひとり、輝きを放っていたのは右サイドで起用されていたイニエスタだった。左のロニーとともに、右で攻撃の基点となり、対角線方向へのドリブル、ベレッティのサポート、そして切れ込んでのシュートと獅子奮迅の大活躍。2つの決定機(前半、チャビのスルーパスに抜け出して放ったシュートが、ポスト直撃。後半、デコのパスからGKと1対1になるも、シュートは惜しくもポスト右)を外してしまったことだけが、唯一の"残念ポイント"だった。昨日は、以前の"シュート決まらない男"へと逆戻り。それ以外は、文句のつけようなし。
圧倒的にゲームをコントロールしながらも、得点には至らず前半終了。しかしプレーにリズムがあったので、チームにもスタジアムにも不安感はなかった。そのうちネットは揺らせるだろう。そんな空気がカンプノウには満ちていた。
そしてその予感どおり、後半開始ほどなくバルサは先制点をゲットする。その主はロナルディーニョ。ゴール正面左、自らが得たフリーキックを、ゴール左下に叩き込んでのゴラッソ。絶妙のカーブ、絶妙な落ち。これでバルサの勝利はほぼ確定的となり、あとはいかに満足して試合を終えるかに興味は移っていく。
追加点はまたすぐに訪れた。66分、今度はピッチ左端からのデコのロングフリーキックを、またもロニーがヘッドであわせてのゴールだった。走りこむスピード、打点の高さ、ボールの軌道、どれもが美しいプレー。交代をライン際で待っていたメッシの気持ちも、これでだいぶ楽になったのではないだろうか。
こうなればもはや、試合の結果が揺らぐことはない。あとはメッシに試合のリズムに馴染んでもらうようにするだけであり、メッシはまったく無理をすることもなく、およそ25分のプレーを楽しんだ。ちょうど3ヶ月ぶりの、バルサ公式戦50試合目となる復帰。おかえりなさい、レオ!試合終盤、エトーが筋肉の違和感(?)で出場を拒否したことにより、R.E.M.トリオ復活がお預けになったことは残念ではあったが(代わりにウラゲールが登場し、喝采を浴びる)、それはそれで仕方なし。
いい形で勝利し、さらにはセビージャとの差を3ポイントにまで広げることに成功したバルサ。バスケットボール部がメレンゲとのクラシコを制して国王杯を制したという嬉しいニュースもあり、クレにとってはほぼ完璧な週末となった。あとは来週、メスタージャでこうもりを撃ち落すことが出来れば、シナリオとしては文句なしとなる。
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