絶対の勝利が義務付けられているこの試合、ライカーはいきなり思い切った作戦に出る。システムを3-4-3に変更してきたのだ。
カンプノウでの第1戦を0-1で落としていたバルサ。まず必要となるのは1点を奪ってイーブンの状況に戻すことであり、敢えて大きな賭けに出ることはなかった。しかしライカーは、その賭けに出る。ドリームチームを彷彿とさせる3バック。これにはバルセロニスタもビックリ。もっと驚いたのはサラゴサだっただろう。
これの奇襲が今回は功を奏し、前半はバルサのペースで展開する。ボールを支配し、プレスをかけ、サラゴサゴールに迫るアスールグラナ。念願の先制点は早々に訪れた。コーナーのクリアボールを中盤で手にしたチャビが、マルケスとのパス交換を絡めつつエリア内まで一気に侵入し、ゴール!ちっちゃなセントロカンピスタの、おっきなゴラッソ。
さらにその8分後には、今度もチビッ子三銃士のひとりイニエスタが追加点。デコとのコンビネーションでメッシがエリア内に切れ込み、強烈なシュートを放つ。これはGKセサールがどうにか弾くが、こぼれ球をイニエスタが押し込んでスコアを0-2とした。この2点はいずれも2列目からの飛び出しによるもので、バルサにこのところ欠けていたゴール。ゆえに感じはいい。
サラゴサにもチャンスはあった。30分前に連続して2つ、決定的な場面を作られているのだ。しかしセルヒオ・ガルシアのシュートはクロスバーに助けられ、至近距離からのオスカルのシュートはロケットとなって空のかなたへ。けれどもスコアは0-2。フットボルってのは分からない。
後半、2点を奪い、合計得点でもリードしたバルサに無理をする必要はなかった。けれどもそこで満足しないのが、バルサらしさか。勝負を決定付ける3点目を狙い、さらに圧力をかけ続けたのだ。ゆえにサラゴサにも付け入る隙はあったのだが、彼らのほうが上手くいかない。それがライカーの指摘していた、プレッシャーというものか。おまけに66分には、ダレッサンドロが一発退場となり、サラゴサはさらに苦しくなった。いくら"カベソン(でか頭)"だからといって、メッシに頭突きはいけない。
あとは普通に守りきればOKのバルサだったが、事態をややこしくしたのが71分のピケのセットプレーからのゴールだった。合計得点でとりあえず追いつき、もう1点決めればサラゴサの勝ち抜け。希望を見出した彼らは、沸き返るスタンドの声援を受け、チャージを仕掛けてきた。さすがにこうなっては、無謀な賭けは続けられない。ジュリに替えてザンブロッタを投入し、守備の安定を図るライカー。
しかし残りの時間帯は、サラゴサの攻勢が続いた。ボールを支配し、どんどんと前線にボールを送り込んでくるサラゴサ。試合はその落ち着かない展開のまま90分を迎え、バルサはどうにか追加点を許さずに逃げ切った。スリリングで、ある意味楽しくはあるものの、いつもこういうことをやられては堪らないという終盤のドタバタ。
しかしいずれにせよ、バルサは勝利した。追い込まれた状況でライカーは勇敢な賭けに出て、今回は首尾よく結果を手に家路につくことが出来た。なんだかんだで、国王杯セミファイナル進出。勝負にいった前半で結果を出せたことが、大きかった。ようやくフエラで勝てない病を克服し、苦手としていたサラゴサ攻略にも成功したバルサ。アンフィールドで同じ作戦を用いるのはリスクが高すぎるが、逆境を跳ね返す力があると示せた意味は大きく、難地でも勝てるという自信を選手たちは手にしただろう。その自信が、今もっとも必要とされるものだ。
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