勝てたのに、落としてしまった大一番。審判が酷かった。
ミッドウィークの国王杯サラゴサ戦にて、突如3-4-3を起用して成功を収めたフランク・ライカーがまたも、新たなシステム案を試みてきた。スタメン表を見る限りは通常の4-3-3かと思いきや、マルケスをセントラルに配置し、両ラテラルを高めのポジションに置く3-4-3、あるいは5-2-3。ボールを持っているときはラテラルが上がって攻撃的に、相手ボール時は下がって守備的にという、アルゼンチン代表などがやっていた記憶のあるシステムだった。
これはセビージャの攻めを潰すことを第一の目的としたデザイン案であり、そのライカーの目論見どおり、序盤のセビージャは効果的な攻撃を見せることは出来なかった。慎重に様子を見ていたということもあるが、バルサはセビージャのスペースを打ち消し、いい形を作らせない。ダニエル・アルベスが積極的にバルサの左サイドをえぐっていたが、中央で守りきってはいたので、特に問題にまで発展していたわけではない。
そして13分、高い位置を取っていたザンブロッタがウラゲールの縦パスに抜け出し、ラインぎりぎりのところからセンタリング。これを超フリーのロナウジーニョがダイナミックに頭で決めて、まんまとバルサが先制に成功する。ザンビーはオフサイド気味であり、ボールには追いつけないと守備陣は判断したのだろうが、その一歩上をいった彼のファインプレーが生んだゴールといえる。静まり返る、サンチェス・ピスファン。
リードを奪ったことで、バルサはそのまま余裕をもってゲームをコントロールしていった。セビージャにチャンスを与えず、これぞカンペオンというゲーム運び。28分にはロナウジーニョが相手守備陣の中途半端なバックパスをカットし、抜け出したところをアイトール・オシオに後ろから倒されてペナルティをゲット。オシオは退場の一発レッド。ゲームを終わらせる、決定的なチャンスとなった。
しかしこのペナルティ職人ロニーのキックは、GKパロップの足に当たってゴールならず。あとあと非常に悔やまれる、珍しいミスとなってしまった。とはいえ、バルサは数的に優位な立場で、スコアもリード。プレスも効いていて、セビージャにはほぼチャンスは作らせていない。このままのペースでいけば、無理なく勝利は手に入るだろうと、少なくともバルセロニスタはそう考えていた。
だが、フットボルはそう簡単には事は進まない。38分、この試合は大活躍のダニエル・アルベスからのボールを受けたケルサコフが、すばやいターンからのシュートでバルデスの守るネットを揺らしたのだ。守備の人数はいたのだが、ケルサコフの鋭さがマルケスを上回った。残念。
この同点ゴールが、セビージャに勇気と自信を与えたのは間違いない。後半の彼らは、明らかに逆転を狙って攻勢に出てきていた。それに対してバルサには、引き分けなら良しという安全策志向はなかったか。中盤のマルティとポールセンにデランテロ陣は封印され、攻撃の迫力を失っていくバルサ。頭の中には、アンフィールドのことでもあったか。
試合の流れを一気に変えたのは、60分のケルサコフの逆転ゴールだった。エリア左隅前で手にしたフリーキックをダニエル・アルベスがネットに突き刺し、ついにセビージャは逆転に成功。沸き返るスタジアム、アドレナリンの上がるスタジアム。
この時点では、まだバルサにも同点、逆転の可能性はあった。まだ数的優位はこちらにあり、気持ちで負けなければ、時間的にも挽回の余地は残されていたのだ。けれどもシナリオがガラガラと崩れたのは、61分のジュリの謎の退場処分。まったくもって意味不明の一発レッドでバルサは数的な優位を失い、さらにはその14分後には(審判に不満を抱いていたのだろう)ザンブロッタまで無用な連続カードで退場に。ゲームは完全にこれで壊れた。
もう後がないバルサ、攻めに出るしかないのだが、水曜にサラゴサとの激闘をこなしていたチームには、残されたエネルギーは少なかった。前がかりになったことで中盤のチャビ・イニエスタへの負担は増え、疲労を募らせていく。さすがに9人でセビージャの守りを割ることは難しく、エトーとサビオラを投入するも、状況的に無理がありすぎた。試合は結局、そのまま2-1で終了。最後はがら空きのスペースをこれでもかというほど利用され、3-1、4-1となる場面も作られたが、ゴールアドバンテージは失わなかったことがとりあえずの収穫というところか。
アンフィールドへ乗り込むには万全の結果とはならなかったが、是非とも選手たちにはこの敗北を怒りと変え、エネルギーとして欲しい。
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