前回大会王者が、前々回王者に完敗。スコアでは勝利したが、勝ち抜けには不十分。内容でも圧倒されていた。
ライカーは予想通り、今回も3-4-3システムを採用してきた。セビージャ戦で見せた、ラテラルを中盤におくタイプの3-4-3(5-2-3)とは異なり、マルケスと"チビッ子三銃士"をひし形に並べたドリームチーム風3-4-3である。研究し尽くされた4-3-3では苦しく、一発大勝負に出るしかないと判断したライカーのギャンブルだったが、過去2試合で連続テスト運用をしていたため、奇襲にならず。策士ラファ・ベニテスの意表を突くことはできなかった。
最初から全力でリバポーを圧倒していくというのがバルサに求められるプランだったが、この目論見はベニテスによっていきなり崩されてしまう。リバポーが勝負を決定付けるゴールを狙って、怒涛の攻撃を仕掛けてきたからである。猛烈なアタックによって、圧力をかけるリバポー。3バックのサイドにできたスペースを用い、決定機を作りまくるリバポー。序盤だけでもリーセが2回、シソッコが1回、他にもあったような気がするが、とにかく際どいシュートを連発した。無失点だったのは、クロスバーに2度救われていたからである。
フィジカル、メンタル、すべてでリバポーがバルサを凌駕していた前半。バルサは相手のリズムに全くついていくことができず、ただボールを回すので精一杯。堅固な守備ラインを脅かすような動きは皆無であり、枠内シュートがゼロというのがそれを物語っている。そもそもシュートが、ロナウジーニョの大ふかし1本だけというのだから悲しすぎ。勝つためには完璧なゲーム運びが必要(前日のプジョル談)だったバルサが、逆にリバポーに完璧なゲームをやられた45分。優劣はあまりにも歴然としていた。
この急造3-4-3がリバポーには通用しないということが分かった前半だったが、ハーフタイム後にライカーがシステムを修正してくることはなかった。後半は光明があると見たのか、それとも打つ手がなかったのか。後半は若干ではあるが、バルサにも流れは向いていた。しかしそれは、細く頼りないものだった。
53分、メッシのパスを受けたロナウジーニョがドリブルでエリア内に単独突破を行い、シュート。いかにも彼らしい好プレーだったが、もっとも肝心のシュートが右ポスト直撃。前半はクロスバーに助けられたバルサ、後半はこのポストに泣く。これが入っていれば、あるいはバルサは勢いを得ていたかもしれない。決して責めることなどできないが、ロナウジーニョはセビージャ戦に続いて、決定機を逃してしまった。これがギガクラックとバルサの現実。
監督として状況を打破すべきライカーの採った決断は、デランテロ陣の入れ替えだった。切り札だったエトーを下げてジュリを、チュラムを下げてグジョンセンを送り込み、ロナウジーニョをやや下がり目の位置に置くライカー。システムはあくまでも3-4-3だった。そしてこれは結果的に、ほんの少しではあるが機能する。75分、グジョンセンがついにGKレイナの壁を破ったのだ。
チャビのスルーパスから抜け出したグッディが、レイナをさっと抜き去ってのゴール。2人の高レベルのプレーが融合して生まれた好ゴールであり、残り時間は15分。この15分であと1点決めれば勝ち抜け、という状況にバルサはしばし流れを掴むが、それも束の間の希望だった。リバポーは崩れることなくこの傾きかけたバランスを修正し、結局リバポーが2度の決定機を作ってゲーム終了。バルサのヨーロッパ2連覇の夢は、あっけなく1/8ファイナルにて砕け散った。
スコアは0-1でバルサの勝利だが、ほんの紙一重でリバポーのゴレアーダとなっていた試合。勝負のかかった前半にリバポーに圧倒的な差を見せ付けられたとあっては、喜べる余地などない。2試合合計得点はイーブンの2-2でも、内容では負けるべくして負けたといえる。ひとつのサイクルが終了しかけているという、象徴的なゲームだった。
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