絶対に勝利しか考えられないこの大一番、ライカーはまたしても3-4-3システムを選択してきた。中盤にチャビ、デコ、イニエスタを並べると、どうしても守備のバランスが悪くなるこの布陣。案の定、序盤のバルサはあまりの不安定さに苦しめられる。リバポー戦と同様に、スペースを突かれまくるのだ。
守備的なバランスが悪すぎるバルサと、相変わらずザル守備のメレンゲと。そんな2チームが対峙すればどうなるか。今回のクラシコは例年になく、ドツキ合いの様相を呈した展開となっていく。それはごく自然の流れだ。
先手を取ったのはマドリーだった。開始わずか5分、左サイドのイグアインに楽々センタリングを許し、チュラムがどうにか弾いたボールが絶好のパスとなって中央フリーのニステルローイへ。となると、ベテランオランダ人がこれを逃すはずもない。余裕でゴールへと流し込まれ、バルサいきなりのビハインド。この日のチュラムは、どうも切れが悪い。この3バックには不向きのようだ。
このゲームを救ったのは、クラック・メッシの活躍だった。右サイドで攻撃の起点となり、ドリブルあるいは裏への飛び出しによってマドリ守備陣を混乱に陥れるメッシ。11分、デコらが中央へデフェンサたちを引き付けておきつつ、エトーが右に送ったボールにメッシが抜け出し、冷静にゴール左隅へシュート。絶妙の位置にボールを置く、最初のトラップで勝負あり。これで流れは引き寄せた、と誰もが考えただろう。
しかし喜びも束の間、その1分半後には再びカンプノウが怒号と共に静まり返る。カウンターでエリア内に侵入したグティを、ウラゲールが引っ掛けて倒してしまうのだ。微妙ではあるが、ペナルティを取られても仕方のないプレー。これをニステルローイが決め、メレンゲがまた試合をリードする。
バルサが目を覚ましだすのは、ようやくこの辺りからである。マドリーのアクセルが緩み始めたのと歩調を合わせ、バルサが徐々に中盤から前を支配。ロナウジーニョを中心に、サイドに張ったエトーとメッシが効果的に白組守備ラインの裏を突き、カシージャスへと迫るのだ。エトーは2度ほど決定機を掴んでおり、100%の彼ならおそらく1つはモノに出来ていただろう。残念ながら今回はゴールには結びつかなかったが、ありがたいことにメッシが切れていた。
27分、ロナウジーニョが左サイドからエリア内にドリブル侵攻し、エトーと超密集エリアでのワンツーを行いながら至近距離のシュート。これはカシージャスがどうにか防ぐが、こぼれ球の前にはメッシがいた。思い切りよく、豪快なシュートをゴール天井に突き刺すアルゼンチンクラック。さらにその10分後にもメッシは1点目と同じ形で決定的チャンスを得ているのだが、これは惜しくもポスト右。とにかく前半の終盤は完全にバルサペースだっただけに、この間に逆転を果たしておきたかった。
しかしドラマは思いがけない方向へ動くもの。前半ロスタイム、ガゴへの無用なファールにてウラゲールが2枚目のカードをもらい、退場となってしまうのだ。気負いすぎたか、あまりにも軽率なプレー。この退場がバルサにとって、決定的なダメージを与えることになる。
ハーフタイムでライカーはエトーをベンチに下げ、シルビーニョを投入する。これで前線はロナウジーニョとメッシの2トップ。彼らは足元でボールをもらいたがる選手であり、メレンゲはカウンター狙いの守備ラインを敷いているため、前半最後の勢いはいずこへ。バルサはまったく効果的な攻めを行えなくなってしまった。さらに守備の安定を求めたシルビーニョだったはずだが、そもそも中盤のバランスからしておかしいバルサだけに、大した役には立たない。逆にニステルローイを旗頭とするメレンゲの攻めに、アップアップの連続となった。
いないも同然のバルサ守備陣の中で、バルデスのセーブによってなんとか失点を防いでいたバルサだったが、その幸運も72分まで。エリア右からのグティによるフリーキックを、セルヒオ・ラモスに頭で合わせられて三度リードを許してしまうのだ。プジョルが競り負けての失点、一人少ないという状況、あまりにも重い失点だった。カンプノウは静まり返る。
早急に状況の打破を図らなければならないベンチだが、今回もライカーの決断は遅い。マルケスとイニエスタのミドルシュートはかなり惜しかったのだが、片やカシージャス正面、片やポストわずかに左。ネットを揺らすには至れない。バルサはほぼ、チームへの誇りと執念だけで戦っていた。ライカー、81分にようやくマルケスに替えてグジョンセンを投入。しかし10人で疲れの見えるバルサに対し、目前に迫ったカンプノウでの勝利をエネルギーとするマドリーの守備ラインを、崩せない。
そんな絶望的な状況の中、救世主となったのはメッシだった。91分、ゴールから40m付近、ロナウジーニョがゆるゆるとドリブルで中央へ進んでいき、意識を引き付けたところで正面のメッシへとパス。そしてメッシは速度を上げてエリア内に突き進み、エルゲラ、セルヒオ・ラモスをかわしてのゴール!個人技で強引に局面を打開した、戦術を超えたクラックのゴラッソにより、バルサは寸前のところで同点に追いついた。
93分、エリア内での微妙なディアラのロナウジーニョへのプレーが逆にロニーのファール判定になるなどして、カンプノウは騒然。しかしゲーム内容からして、3-3ドローというのは(悲しいながら)妥当な結果といえる。自爆に近い形によって、勝利を手放しているのがこのところのバルサ。ウンディアーノ・マジェンコの判定に苛立たされるところはあったとしても、このマドリーから3点も奪われ、ドタバタ劇を演じたところがそもそもの失敗。守備がこれほど不安定では、ポイントを落とし続けても不思議ではない。
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