全体として、気合の感じられない試合。あらゆる面でサラゴサにリードを許し、文句なく敗北。
およそ1ヶ月前にチームに漂っていた、“活気のなさ”がここにきて復活。このところ復調しつつあったバルサではあったが、ラ・ロマレダにて、またも勝負弱さを露呈することになってしまった。チャンピオンズ出場権を狙うサラゴサのモチベーションは、バルサのそれを明らかに凌駕する。国王杯で苦杯をなめさせられていたことも、彼らにはプラスに働いていただろう。どうにもボンヤリとしたバルサに対し、サラゴサは序盤からエネルギッシュだった。
なにを思ったのか、ライカーはこの大一番でまたもや3-4-3を採用してきた。コパでの再現を期したのだろうが、残念ながら現実はそうは甘くない。中盤に人数はいるのだが、プレスが上手くかからない。気迫で勝るサラゴサにボールを制圧され、人手の薄いサイドへボールを散らされ、ドタバタと守ることの繰り返し。バルサの生命線は中盤でのプレスであり、それが機能しなければ守備も攻撃も歯車は合わない。このゲームもまさに、そのような様相を呈した。
サラゴサはコパでの失敗を教訓とし、ダレッサンドロを左サイドに配置。彼と積極果敢な押し上がりを見せる右ラテラルのディオゴがアクセントとなり、序盤からバルサ守備陣を混乱に導いていった。バルサは彼らの攻めを防ぐので手一杯となり、攻撃まで気持ちが回らない。ボールが入るのは中盤までであり、その先はサラゴサの組織立ったラインに刈り取られて即座にアウト。チャンスの数はもとより、ボール支配率でも下回るというのが、いかにダメだったかをよく表している。ボコボコに攻められた前半を0-0で折り返せたことは間違いなくラッキーであり、その点だけが褒められるところだった。
後半になり、さすがにライカーもシステムを通常の4-3-3へと変更してくる。バルサは前半の45分間を、自ら無駄にした形となった。この修正によって、バルサはバランスを取り戻す。ゲームもコントロールしだすかに見えた。
けれども56分、そんなムードをダレッサンドロとミリートが打ち砕いてしまう。スローインのボールをダレッサンドロが2人に囲まれながらもキープし、ゴールライン際から、ほぼ苦し紛れのパスをエリア内へ。これはバルデス、あるいはプジョルがクリアするかに思えたが、その前にサッと割り込んだディエゴ・ミリートが一足早くボールに触り、角度のないところからゴールを割ってみせたのだ。技ありゴール。バルサは重たいリードを許すことになった。
最悪でも同点に追いつきたいバルサは、ようやくアクセルを踏み込んでサラゴサゴールに迫っていく。しかしエトーの不在も響き、なかなか決定機といえるものを作ることが出来ない。サラゴサの守りは堅く、ダイナミズムのない攻撃ではラインを崩せないのだ。これ、といえる場面は2回。60分のロナウジーニョのパスを受けたデコのシュート(GKセサールがセーブ)、73分のジオのセンタリングを受けたメッシの至近距離からのシュート(またもGKセサール)+こぼれ球をグジョンセン(枠外へ)。特に73分の一連の攻めは惜しかったが、運は味方しなかった。
そしてその後は押し切ることも出来ず、最後まで執念を見せたサラゴサが逃げ切って勝利。バルサはまたもや“ここぞ”という敵地での大一番を落とすことになり、ホームでラシンを迎え撃つセビージャに首位を譲り渡す公算が高い。結果もそうであるが、残念だったのは“何が何でも勝利する”という強い気持ちを選手たちのプレーから感じ取れなかったこと。またもバルサは、堂々巡りを繰り返す。
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