予想以上の圧勝だが、なんといっても話題はメッシのゴラッソで持ち切り。
サビオラではなくグジョンセンが“9番”だった以外は、予想通りの先発メンバー。エヂミルソンの怪我の影響か、中盤はチビッ子トリオ編成になっている。そしてシュスター・ヘタフェはこれを読んできており、バルサ封じのための4-5-1システムを採用する。だが、今回のチビッ子トリオのキレの良さは、知将シュスターの計算を超えていたのだろう。とりわけ光っていたチャビを中心に、バルサの中盤は機能する。
序盤から、ボールコントロールはバルサ。ここまではいつもと同じなのだが、マジョルカ戦と異なっていたのは、ヘタフェがゴール前に“バスを並べる”のではなく、積極的にカウンターを狙ってくるチームだったというところにある。中盤が機能していれば、幾分でも前に出てきてもらったほうが、バルサとしてはありがたい。
先制点、そして追加点は芸術的なゴールの連続だった。まずは18分のチャビ。メッシとのパス交換のあと、巧みにボールをコントロールし、くるりと回転してのテクニカルなシュート。なんでも、かつてのロマーリオを彷彿とさせるようなゴラッソだったらしい。
そして29分、この試合の最大のショーの幕が開く。ピッチ中央付近でチャビからボールを受け取ったメッシが、まずは最初のマーカー二人をフェイントで突破。そこから一気にアクセルを踏み込み、全速ドリブルでヘタフェゴールへとレオは突き進んでいく。そしてエリア前で待ち構えるデフェンサたちを一人二人と抜き去り、最後はエリア内でGKルイス・ガルシアまでもかわし、最後は角度のないところから右足で逆サイドのネットへズドン。86年メキシコW杯のマラドーナの“伝説の5人抜き”、あるいは96/97シーズンのコンポステラ戦、ロナルドのゴールを思い出させる超絶ゴラッソだった。
スペインはもちろん、母国アルゼンチンもこのゴールに騒然。各メディアには“メッシ”、“マラドーナ”の文字が躍り、伝説のゴールとして末永く語り継がれていくことは間違いないだろう。平日9時にカンプノウを訪れた約54000人のクレたちにとって、最高のプレゼント。さらに44分、メッシはカンプノウを大フィエスタとする3点目をヘタフェゴールに突き刺した。キレてるメッシは、誰にも止められない!幸福感に包まれ、3-0で前半は終了する。
しかし、このまますんなりと勝てないのが今季のバルサ。華々しい前半を示したかと思えば、後半は別チームになってしまう悪い癖は、直さなければならない。試合の流れを変えたのは、そのバルサ自身の“緩み”とシュスターの送り込んだグイサだった。バルサは明らかに集中、それに戦う姿勢を失い、ヘタフェにプレーをさせる余地を与えてしまう。そして59分、61分と連続してゴールを許し、気がつけば3-2と1点差に。いくら3点とって勝とうとも、これで終わっていれば大ピンチという状況だ。幸いだったのは、この夜のバルサにはゴール運があったことである。
混乱の2分間を終え、直後の63分にはコーナーから、グジョンセンがもう一度ヘタフェを突き放す4点目をゲット。さらに74分、チャビからのパスを受けたエトーが決勝進出を大きく引き寄せる5点目を叩き込んだ。
ドタバタはしたものの、なんだかんだでスコアは5-2。まだ敵地での第2戦は残っているものの、バルサが9年ぶりとなるファイナル行きの切符を半分手にしたことは間違いない。あとは最後まで気を抜かず、きっちりとヘタフェを退けるだけだ。国内ドブレッテは、また一歩手の届くところへやってきた。この快勝の勢いをそのままに、週末のエル・マドリガルでのビジャレアル戦でも爆発してほしい。
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