前半、ゴールを決めるべき時に機会を逃し、最後に同点にされる最悪のパターン。シーズンの流れは完全に、バルサから遠ざかっている。
今季リーガでは無敗を誇る“要塞”カンプノウとはいえ、かつての強さは発揮できなくなっていた昨今。マジョルカ戦、レバンテ戦はいずれも1-0による辛勝であり、「このままではいつかやられるかも」という兆候は1ヶ月前からあった。そしてそれが現実として起こってしまったのが、このベティス戦だ。明らかに戦力面で劣る相手に勝負を決めることができず、最少リードで最後までもつれ込んだ挙句の同点劇。いつも1-0で逃げ切れる保証なんて、どこにもない。
勝利しか許されないこの試合、バルサは序盤から積極的に攻撃を仕掛けていく。中盤のプレスでボールを奪い取り、左サイドを中心にベティス陣内に侵入。幾多のチャンスを積み上げていった。最初のチャンスは5分。デコがドリブルにてエリア内に突っ込んでいき、まんまとペナルティ獲得。これをロナウジーニョが決めて、いきなり先制点を手に入れたのだ。カンプノウの多くは、この瞬間に勝利を確信。しかし、そうは問屋が下ろさない。
この後の前半、バルサは少なくとも3つ、ネットを揺らしていて不思議ではない場面を作り出す。23分には左サイドからデコがクロスを上げ、ドンピシャのタイミングでエトーがヘディング。しかしこれは、わずかにポスト右にそれる。そして31分にはエトーのアクロバティックなチレーナが炸裂。左からのロニーのクロスに、空中で身体を高速反転させながらズドンとシュート。決まっていれば超絶ゴラッソだったが、GKコントレラスの正面という不幸によって阻まれる。さらに39分、右から中央にドリブルで切れ込んだメッシからイニエスタにボールが渡り、美白カンテラは見事なコントロールで守備ラインを突破。そこまでは完璧だったが、シュートだけがわずかに左に逸れてしまった。
ハーフタイム直前、チュラムのコントロールミスからヒヤリとさせられる場面はあったが、これはバルデスの気合のセーブで事なきを得る。前半の印象は、バルサの圧倒的優勢。しかし再三のチャンスを今回も決められなかったことは不安材料だった。大方は楽観的だったが、とにかく追加点が重要であるという認識は共通していた。
そして後半、バルサのリズムは明らかに下降する。選手たちの動きは減少し、パスコースも限定された。パスの速度、正確性も低下。前半は盛大な拍手を送っていたスタジアムも、「いつものパターンか」とざわつき始めていく。得点の匂いは、まったく漂わなくなってしまっていた。逆に漂うのは、嫌な予感だけ。ライカーは建て直しのためにロナウジーニョとメッシを下げ、エヂミルソンとサビオラを投入したが、効果は現れなかった。
バルサは見るからにガス欠。試合を決めるゴールを奪っての勝利というのは期待できるものではなく、1-0を守りきっての勝利が精一杯という状況だった。体力だけではなく、集中力も限界だったのか。ベティスは巧妙に、そのバルサの隙を突いてきた。ゲームもあと数分で終了という89分、アスンソンがすばやいリスタートでバルサを驚かせ、ソビスが元気一杯にエリア内に切れ込んでシュート。ボールは無情にも、飛び込むバルデスの下を通り抜けていってしまうのだった。バルサの希望を打ち砕く、あまりに重いエンパテ。失望だけが、カンプノウを支配した。
この結果、バルサとマドリーは66ポイント同士で並ぶことになり、直接対決の結果によってメレンゲが首位に立つ。バルサの自力優勝は消滅し、マドリーのつまづきと自分たちの勝利に望みをつなぐしかなくなってしまった。さらに2ポイント後方にはセビージャも迫り、4ポイント差でバレンシア。このままいけば、チャンピオンズ本大会出場となる2位以内も怪しいといえるだろう。夏のスケジュールが、さらにややこしくなる。
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