一体どうしちゃったのか、突如“本当の”バルサが目覚める。
タイトルを争うセビージャとマドリーが共に勝利し(特に白組は劇的に)、極限のプレッシャー下におかれてのゲームとなった、ビセンテ・カルデロンでのアトレチコ戦。雨が降り、滑りやすく重いピッチでの試合というのも、バルサにとっては歓迎すべきではない状況となっていた。
試合の序盤は、予想通りというか、アトレチコのペースで進んでいく。バルサはボールを治めるのに苦労し、中盤でボールを展開させることが出来ない。前線の選手たちも厳しいマークに遭い、下がり目の位置へボールをもらいにくるシーンが目立っていた。2列目からの突破で局面の打開を図るも、こちらも上手くいかず。アトレチコの攻めもさほど破壊力を感じられなかったため、ゲームは1点、あるいは2点を争うものになるというのが、前半途中までの印象だった。
しかし前半最後の6分間で、試合はいきなり決着を見せることとなる。まずは39分、アトレチコの壁を破ったのはエトー&メッシのワンツーだった。メッシがエリア際までドリブルで持ち込み、左のエトーへパス。エトーはシュートと思わせてメッシへとボールを返し、アルゼンチン人クラックは敵選手に囲まれながらもきっちりとゴールを決めた。一気に士気を上げる、バルサの面々。
さらに42分、チュラムからのロングフィードを受けたザンブロッタが、GKピチュ(クエジャルから登録名変更)のポジションをよく見て、左足でのバセリーナ。前に出る必要のなかったピチュの隙を見逃さなかった、ザンブロッタのファインゴールだった。この得点がアトレチコに与えたダメージは、かなり大きいものとなる。彼らの集中力は、ここで大部分を失われていた。
前半終了直前の45分、ロナウジーニョからのパスを受けたデコが左エリア深いところからセンタリングを送り、GKピチュが軽く手に当てるのが精一杯だったところを、走りこんできたエトーが執念で押し込んで0-3。カルデロンで、しかも前半だけで3点のリードを掴むことになろうとは。おそらくはやっている選手たちも驚きの結果を手に、バルサはハーフタイムを迎えた。
アトレチコの逆転勝利の芽は、45分でほぼ潰えていた。あとはバルサが、前半で大量リードを奪ったゲームでありがちな、集中力の欠如を繰り返さないかというのが課題。だが昨日のライカーの教え子たちに、その心配は不要だった。後半の笛が鳴っても、この日のバルサはリズムを低下させない。このあたりは、“悪夢の一週間”の教訓がよく活かされているようだった。前日のエトー、デコ、プジョルによる“結束の食事会”も効いていたのかもしれない。
アトレチコはどうにか一矢報いようという気持ちは見せていた。けれども今度もネットを揺らしたのはバルサ。57分、エトーとのエリア内での狭いところでの壁パスから抜け出したロナウジーニョが4点目を決め、完全に勝負あり。前半終了時点で自分たちのチームに口笛を鳴らしていたカルデロンの観客たちも、これで心置きなく“反マドリーの応援”を出来るようになった。
通常であれば、このあたりでギアを緩め、残りは流していくという展開になることが多い。しかしこれまでに溜まったフラストレーションを晴らしたかったのか、バルサのゴールは止まらない。終盤はラインを上げたアトレチコの背後に、楽々とボールを送り込んでいたバルサ。79分には引いた自陣から、浮き球でポンと送り込まれたパスにメッシが一人抜け出し、最後はピチュをあざ笑うかのようなバセリーナ。さらに90分にはカウンターからイニエスタが決めて、0-6の圧勝劇を締めくくった。
こうして、どのような形でもいいから3ポイントが求められていたアトレチコ戦で、まさかまさかの大ゴレアーダをやってのけたバルサ。これに慢心せず、高い集中力を持って臨めるのであれば、残り3試合には間違いなく勝利できるだろう。バルサ復活のイメージは、ゴールアドバンテージで首位を行くマドリーに対してのこの上ないプレッシャーとなるはず。バルセロニスタに、希望の光再び。
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