全世界のクレの期待を集めて、しかしスペイン国内では映像が見れないという放映権戦争の煽りをモロに受けながら始まった07/08バルサは、クレに大きな失望を呼んだ。
アンリではなくメッシを起用した以外は、プレシーズンと同じ布陣で開幕戦に臨んだライカー。クレの願いは、まずは昨季とは違う、勝利への熱いハートを見せてほしいというものであったが、それは序盤からいきなり砕かれる。何人かの新顔は加わったものの、与えられるイメージは昨年までの、“名前とテクだけでフットボルやってます”的バルサ。ボールはそれなりに支配するけれども、それだけであり、なんら進歩らしいものは見受けられないのだ。全力で汗をかくわけでもなく、特に攻撃にアイディアがあるわけでもなく、ゴールどころかシュートすらない。サルディネーロにいたのは、数ヶ月前と同じバルサだった。
対するラシンは、バルサを迎え撃つチームの常として、守備を固めてのカウンター戦術を採ってくる。ボール支配率30対70からも分かるように、エリア前で整然と守備ラインを整えるラシン。しかし彼らはただ守るだけではなく、バルサよりもむしろ数多くのチャンスを作り出していた。序盤だけでも3回、ラシンはバルデスを脅かしている。
バルサが最初に“攻撃っぽいこと”をやったのは10分過ぎ。決定機と呼べるものを作り出したのは、前半が残り5分を切ってからというのだから、悲しすぎる。最大のチャンスは43分、ロナウジーニョの絶妙なパスから抜け出したチャビがGKを抜いてシュートをするのだが、これはギリギリのところでルイス・フェルナンデスによってクリアされている。ほぼ何も出来ないまま、迎えたハーフタイム。
そして前半のプレーで好いと判断したのだろう、ライカーは選手交代を行うことなく後半をスタートさせている。チームの動きには多少の改善は見られていたが、それでもチャンスを作れないところは変わらない。唯一気を吐いていたのはメッシだったが、彼一人でいつも仕事が出来るわけでもない。
61分、ライカーはついにアンリを投入。しかしベンチに下がったのは、ピッチ上で最も存在感を出していたメッシだった。チーム内に波風が立つことを避けるライカー。今回はエトーに気を使ったのだろうか。おそらくはメッシが今回はもっとも交代させやすかったのだろう。
ゲームを左右する出来事が起きたのは、67分。途中出場したばかりのスモラレクが、アビダルへの危険なタックルで一発退場となったのだ。格下のチームに対し、数的有利を得たバルサ。これに対してライカーが採った策は、トゥレに替えてデコを投入するというものだった。昨年イマイチだった、チビッ子三銃士の復活。この交代も、ライカーの目指すところが分からない。実際、これにて状況が変化することは何もなかった。
そのまま試合は、退屈極まりないプレーを続けるバルサと、守りきればOKのラシンという構図で進んでいく。得点の予感なし。40分にはエリア際からのアンリのシュートがポストを叩くというシーンがあったが、それだけだった。むしろロスタイムには、あわや失点という場面があり、この点でも進歩が見られないバルサ。もし最後に失点していても、“不条理な敗戦”とは言えない内容だった。
昨シーズン、大いなる失意とともに、クレからの信頼を失っていたバルサ。それは何が何でも初日から、挽回すべきことだった。しかしサンタンデールではまたも、恥をかくだけに終わったライカーと教え子たち。やはり彼らは、こっぴどい目に遭うまでは目を覚まさないのか。上手くいったプレシーズンに過信していたようでは、この先も思いやられる。
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