優勝候補のひとつ、セビージャを迎えての決戦。バルサは苦しみながらも、順当に押し切って勝利をつかんだ。
クライシス、と渦中のロナウジーニョがふくらはぎにダメージということで、彼の位置にイニエスタを先発起用したライカー。それによってボールの流動性は良くなっていたものの、中央のアンリが未だ“バルサ感覚”を体得しておらず、前半はチャンスをなかなか作れずにいた。
この試合にかけるバルサの意気込み、プレー姿勢はよかった。特に集中力、守備意識は高く、セビージャに与えたチャンスは20分、左サイドをえぐられてのレナトのヘッドのみ。左ポストを直撃する、あわやというシュートだったが、運もバルサに味方していたようだ。
対するバルサは、決定的なチャンスは2つ、それなりのチャンスは4つといった感じ。特にこれというのは2分、イニエスタが左サイドをドリブル突破し、中央のアンリへとパスを送ったシーン。これはデフェンサがコーナーへ逃れている。5分には右エリアでのメッシによるドリブルショー、さらに34分にはアビダルが、41分にはトゥレが、45分にはデコがそれぞれ強力なミドルシュートを放っているが、いずれもGKパロップの好守や枠を外すなどして、得点には至っていない。
ゲームの主導権はバルサにあった。前述のように、セビージャには自慢の右サイド突破を含め、攻撃はほぼ封じ込めている。シュートすら1本しか打たせていない。しかしセビージャの速くて組織立った守備を崩すことも出来ず、エリア付近でのボール展開やアイディアは不足。アビダル、ザンブロッタの上がりがなければサイドから崩すということがなく、中央で呆気なくボールを絡め獲られるというパターンがほとんどだった。
後半に入っても、バルサがボールを支配し、それでもゴールに届かないという流れはしばらく変化しなかった。ただし、得点への匂いは徐々に高まってはいく。55分、デコの絶妙のフリーキックに、アンリのヘッドはあと数センチ届かず。57分、左コーナーでのマルケスのヘッドは、ポストによって阻まれた。流れはバルサにきていた。
ゲームがよりバルサ向きになるのは、60分のジョバニ投入からである。イニエスタが中盤に下がり、アンリが左サイドへと流れる機会が増えたのだ。中央に縛られていた時に比べ、活力を得るアンリ。70分、マルケスのロングパスに抜け出したフレンチは、見事なトラップからパロップとの1対1に持ち込む。しかしシュートの勢いがやや弱く、パロップが触れたことでコースが変わり、惜しくも右ポストに阻まれるという不運。全世界のバルセロニスタ、悶絶。
どうやら今回も、アンリにゴール運はないようだった。しかし彼には、パスで局面を打開する能力もある。73分、彼からエリア内のメッシへの対角線の速いパスが、ついに均衡を破るのだ。最初のタッチは彼にとっては不本意だったかもしれないが、浮き上がったボールに身体をひねり、強烈なボレーを叩き込むレオ。またしても偉大なるメッシによるゴラッソ伝説がカンプノウに刻まれた。すぐさまスタンドへ駆け寄り、ロナウジーニョに向けて「やったよ!」とサインを送るところも憎いメッシだ。
途中からは引き分け狙いに見えていたセビージャから、先制点を奪った。これにてシナリオは一気にバルサ有利となる。セビージャは前に出ざるを得なくなり、それはバルサにとって好都合なことだった。そして79分、試合を決定付けるプレーが生まれる。デコからの右コーナー、シュート目前のジョバニを、ポウルセンがつかみ倒してしまうのである。審判は迷わずペナルティの宣告。メッシがこれをパロップをあざ笑うかのように流し込み、点差は2点へと広がった。
スタンドはメッシコールに包まれ、ゲームはフィエスタの様相を呈していく。パス回しに対して“オーレ!”も起こり、1週間前のピリピリした雰囲気は何処へ、という感じ。ロスタイム、ウラゲーがあっさりとカヌーテにオフサイドトラップを破られ失点してしまうのだが、それでもフィエスタムードは収まることはなかった。祭りの締めくくりは、メッシに代えてのボージャン登場。ジョバニと最後にいい絡みを見せ、バルセロニスタに次への希望も与えてくれた。
セビージャは昨年の最強レベル時に比べると不足はあったが、万全でないのはバルサも同じ。彼らが非常に倒しにくいチームであるのは間違いないし、グループとしてのプレーで一歩も引けを取らないどころか、終始押し込んでいたのは高く評価できる。バルサはやはり、やる気になれば結果を出せるチームなのだ。重要なのはモチベーション。それがここ2試合でハッキリしてきた。次のサラゴサ戦も、この調子でいってみよう。
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