ついに、ティエリー・アンリが眠りから覚めた。いきなりハットトリックを決め、チームをフエラでの今季初勝利へと導く大活躍。バルサ号、順調なり。
今シーズンはここまで、敵地での試合はいずれも惨めなイメージしか残せていないバルセロナ。この日の目的は3ポイントを手中に収めると共に、いかにしてそれを成し遂げるかにあった。つまりはイメージの改善である。相手は最下位に沈むレバンテ。相当に押し込んで当然の相手だ。
バルサはしかし、序盤は慎重にゲームに入っていく。危なげはなかったけれども、抵抗を見せるレバンテの守備ラインを崩すには至らず、最初にシュートを放ったのは12分。デコのフリーキックに頭で合わせたミリート、というシーンまで待たねばならなかった。15分を過ぎるあたりから、ゲームはバルサペースで展開していく。
主役となったのは、ここまで不運に付きまとわれていたフランス人クラックだった。まずは17分、デコの左コーナー。最初のボールはGKストラーリがパンチングで弾くのだが、このボールはチャビがヘッドで右のメッシへ展開。メッシはここで強烈なボレーを放つのだが、どうにかストラーリが防いだところを、フリーになっていたアンリがさらっと流し込んだのだ。ついにきた、リーガでのティティゴール!アンリの呪縛は解け、これ以降の彼は見違えるようにゴール前で精彩を放つようになる。
もはやアンリに、GKとの1対1における不安などなかった。24分、メッシのスルーパスに勢いよく抜け出し、そのままストラーリをものともせず、スピードに乗ったままゴール右端に右脚インサイドで蹴りこむ、これぞティティゴール!で0-2。いよいよクラックの本領発揮である。
前半で2点差を付けられ、意図の見えないレバンテに反撃の余力はない。41分には今度はアンリの縦パスを受けたメッシが、力強いドリブルでシュートまで持ち込んでいる。しかしこれは惜しくもポスト左に外れ、試合はどうにか決まってしまうことなくハーフタイムを迎えることになる。
しかしレバンテの希望は後半開始早々に失われる。48分、デコのスルーパスがデフェンサに当たり、浮き球となってエリア内のスペースへと流れた。これが左のアンリへの格好のパスとなり、ティティは落ち着き払い、ストラーリとの間合いを完全に見極めてサラッとゴールへシュートを叩き込む。今までの苦労がウソのように、ゴール勘は甦っていた。これで0-3、勝負あり。アンリ、いきなりのハットトリック達成おめでとう!
この瞬間を至近距離から、「俺も!」と貪欲さをたぎらせて見つめていたのはメッシだった。そして50分、アルゼンチン人ゴールハンターはすぐさま、自らのプレーで飢えを癒す。ハーフライン付近のデコから、ロングパスを受けたメッシはじりじりとエリアに詰め寄っていく。するといきなりドリブルのリズムを変え、一気にゴール前に切れ込んで左ネットにシュートを突き刺してみせたのだ。マークについていたチリージョ、アルバロ、ストラーリ、一切対応できず。この人、マヂでやばいです。
スコアは0-4となり、バルサは明らかにペースを緩める。それにしたがってレバンテは中盤での支配力を強め(リガとエティエンが存在感を発揮)、71分にはプジョルのファール判定を誘ってペナルティを獲得。これをビケイラが決めて1-4とした。
けれどもレバンテの反撃もここまで。バルサは若干プレスを修正し、そのまま特に危険な場面を作ることなくゲームを終了させた。唯一の残念なニュースは、85分にトゥレ・ヤヤが太ももを痛めて退場してしまったこと。深刻な怪我でないことを祈るしかない。怪我人の多発は、バルサの不安材料だ。
下馬評どおり、“カンペオン”的な強さを見せたバルサが、最下位であることが納得のレバンテをあらゆる面で圧倒しての勝利。次はドイツでのチャンピオンズ、シュツットガルト戦。この勢いのまま勝利を手にし、“フエラで勝てない病”に完全なる終止符を打ちたいところだ。
|