序盤は押し込まれたが、相手GKのミスから一気に流れを引き寄せる。天敵アトレティコを一蹴。
キックオフ直後からアトレティコはかなり積極的にプレスを仕掛け、得意としているカンプノウで勝負を決めようとしてきた。中盤でボールを支配し、守備陣の背後へどんどんとパスを流し込んでくるアトレティコに、バルサはしばし自陣に縛り付けられる展開。今季のアトレティコはパス展開によって攻撃を組み立てるチームとなっているので、中盤を制すればバルサペースに持ち込めるのだが、本職ピボッテの不在はやはり痛い。
最初の15分は、明らかにアトレティコが流れを握っていた。しかしフットボルというのは分からないもの。ひとつのプレーが局面を大きく変化させ、ここぞの決定力がモノを言うのだ。15分、デコから右のメッシへ大きくボールを展開し、メッシはエリア際からシュート性のクロスを入れる。これはGKアッビアーティが難なくキャッチできると思われたのだが、なんとここで痛恨のポロリ。そこに詰めていたデコがいて、バルサは幸運な先制点を獲得するのである。
この贈り物により、アトレティコの気持ちはサゲサゲとなり、逆にバルサはアゲアゲ。中盤でボールが回るようになり、自ずとチャンスも作れるようになっていく。そして20分、エリア左角でのロナウジーニョとの小刻みなワンツーからメッシが抜け出し、ゴール右に突き刺す追加点。これでスコアは2-0となり、さらにアトレティコの元気はなくなっていく。
傷心の赤白マドリーを相手に、ボールを支配するのは難しくなかった。序盤15分の姿はそこにはなく、ロナウジーニョも楽にスルーパスを狙っていける状態。37分にはアッビアーティの半端なクリアをメッシが奪い、デコを経由して左を駆け上がってきていたロナウジーニョがドカンとシュート。これは惜しくもネット左にそれ、ゴールとはならず。さらに44分にも、ロニーの浮き球パスを受けたメッシがワントラップでボールをコントロールし、シュートを放つが、アッビアーティが懸命に押さえ、アトレティコはどうにか後半にかすかな望みをつないだ。
そして後半だが、基本的にはバルサがゲームを支配している。49分にはイニエスタがドリブルで切れ込み、メッシがポストとなってデコの強烈なシュート。51分には右サイドのデコからファーへクロスが入り、アンリが落としたところをミリートが至近距離からのシュート。これらはいずれもアッビアーティがどうにかこうにか防いでいる。
ただ、後半のバルサは目に見えてアクセルを緩めていた。中盤でのプレスは弱く、最後の決定的な仕事はほとんど許さなかったものの、アトレティコはボールをエリア付近まで回せるようにはなっていた。63分のマキシ・ロドリゲスの強力なミドルシュート(バルデスが好セーブ)、67分のシマオのエリア突破などはその影響によるものである。
それでもやはり破壊力ではバルサに分があり、デコ、アンリ、ロナウジーニョ、メッシらが決定機を演出していく。特にアンリには2度ほど惜しいチャンスがあったのだが、昨日は彼の日ではないようだった。前後半を通じ、エリア前に非常に頻繁に顔を出していたのはデコだった。この日のチャンスのほとんどがデコを経由しているのではないか、というくらいの存在感。この彼の復調ぶりは、台所事情の苦しいバルサにとって非常にありがたい。
そして試合終了間際、最後を締めくくる3点目もデコ絡み。エリア左際の彼からジョバニへと縦のスルーパスが送り込まれ、ゴールライン前からジョバニはグラウンダーのクロス。これに走りこんでいたチャビが合わせて、難なく美しくネットを揺らすことに成功したのだった。
大苦戦も予想されたこのゲーム、終わってみればバルサのゴレアーダによる快勝。地力の差を見せ付ける形での勝利となった。アトレティコはもはや、天敵ではなくなったか。内容としては手放しで喜べるものではなく、特に後半は改善すべきポイントも見られたが、こういったゲームを心地よく勝てたのが大きい。これにてひとまず、代表戦ウィークを明るい気分で迎えられる。あとは怪我人が出ないことを祈るだけだ。
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