調整不足と、代表選手たちに蓄積された疲れ。FIFAウイルスの猛威をモロに受け、ビジャレアルに完敗した。唯一の救いは、ボージャンのクラブ最年少記録ゴールのみ。
この試合に対する準備具合は、明らかにビジャレアルに有利であった。わずか1日しか全体練習を行えずにエル・マドリガルに乗り込んだバルサは、まざまざとコンディション&モチベーションの違いを見せつけられることになる。守備に対する集中力を欠き、受身でスタートしたバルサに、容赦なく襲い掛かるイエロー・サブマリン。先制点はこの上なく容易に、さもそうなることが決まっていたかのような当然さをまとって訪れる。
わずか3分、カソルラがエリア左から、ギジェ・フランコの見事なヒールパスによるワンツーにて抜け出してバルデスと1対1に。シュートはファーサイドネットに突き刺さり、呆気なくビジャレアルは先制に成功した。さらに13分にはアビダルのピレスに対する微妙なファール判定にてペナルティを献上。マルコス・セナがこれを決め、序盤にしてバルサは重たすぎる2点のリードを背負わされることになった。この時点で、試合はほぼ決まっていたといえる。
ただ、バルサもここから反撃を開始する。2点差をつけられてからの15分ほどは、デコ・チャビ・イニエスタのチビッ子トリオが中盤をコントロール。この試合最大の見せ場を作ることになる。主役となったのは、いつもほどのパフォーマンスはないにせよ存在感を出していたメッシと、17歳にして先発を掴み取ったボージャン・ケルキッチ少年。この試合バルサ唯一のゴールは、この未来のスーパーコンビによって紡ぎだされることになった。
25分、中盤でボールを手にしたメッシから、ボージャンに向けて1本の縦パスが送り込まれる。エリア左際で完璧にマークを外していたボージャンはこれでGKビエラと1対1となり、強烈なシュートをニアの左ポスト横に突き刺して2-1。通常はファーに打つのが容易と思われる場面で、あえてほとんどスペースのないニアを狙ってのシュート。このあたり、彼の非凡さをよく現している。初先発を掴むや否や、バルサ史上リーガ最年少ゴールをサラリと決めて見せた17歳少年。これはリーガ全体でも3番目の記録である。おめでとう、ボージャン!
しかしバルセロニスタの喜びは束の間だった。この日は特にチームとしての守備が低調で、これまでに見せていたような安定感はどこへやら。33分、ピレスがプジョルとミリートのマークをかわし、エリア内でフリーになってしまったのだ。慌てたミリートはどうにか背後からボールにチェックをかけようとしたが、無念ピレスは激しく倒れてペナルティの笛がなる。これをまたもやセナが決め、バルサの息の根は止まった。
残り60分は、バルサにとって“ただ一刻も早く過ぎ去って欲しい時間”となる。反撃の余力は、ほぼゼロといってよかった。ミッドウィークに代表戦を戦った選手たちの疲れはドンドンと表面化されていき、リズムは低下していく。後半から仕掛けた3-4-3も上手く機能しない。そのままダラッとゲームが終わってくれればまだマシだったのだが、FIFAウイルスの猛威はそれだけには止まらなかった。更なる怪我人の発生によって、バルサは追い討ちをかけられるのである。
今回の犠牲者は、チームの心臓といっていいデコだった。72分、彼もまた今季チーム内に多発している筋肉の裂傷によって、ロッカールームへと強制退場。ドクターの初期診断によると、全治4〜5週間の怪我だという。ああどうして、このような試練が次から次へとバルサを襲うのか。チャビ、イニエスタにかかる負担は自ずと大きくなり、彼らの故障もまた危ぶまれる。中盤クライシス深刻化。
火曜日のレンジャース戦もまた、バルサにとっては非常に厳しい試験となりそうだ。
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