フエラでの悪い流れを断ち切るどころか、さらに悪化させただけの最低試合。
この日のバルサの狙いは、フエラでのパッとしない成績を今度こそ改善させ、昨季アルフォンソ・ペレスにて食らった“悪夢の4-0”の亡霊を振り払うことにあった。あれから6ヶ月が経過し、監督もシュスターからラウドルップへと変わったヘタフェ。開幕当初は結果が出ずに苦しんだ彼らだったが、ここ2試合は連勝と復調の兆しを見せており、バルサはそれにしっかりと協力することになる。
苦手のフエラで勝利するためには、カーサでのプレーと同じようにアグレッシブに、激しいプレスをかけなければならないとチーム誰もが口にしていた。なのにフタを開けてみれば、そこにあったのは以前と変わることのない、漫然とプレーをするバルサ。積極的にチェックを仕掛けるヘタフェに対し、バルサはあまりにも無策だった。
選手たちの動きは鈍く、パスは遅く、守備陣を崩す動きもなく、プレスも緩い。あらゆる局面で、バルサはヘタフェに劣っていた。ボールを持つ時間だけは長いが、効果を発揮しないのはいつものパターン。むしろボールを持ったときのウチェ、マヌを中心とした分厚い攻撃から、ゲームを支配しているのは完全にヘタフェだった。
組み立てのための横パスすらまともに回せないバルサに対し、ヘタフェの攻めは鋭い。回数は多くないにせよ、ここぞというときにみせる全体での押上げと、それによる波状攻撃。バルサはどうにかエリア内での対応にて、ボールを跳ね返している状態だった。
この試合を通じての、バルサの唯一といっていいゴールチャンスは23分。イニエスタからの絶妙なスルーパスにアンリが抜け出し、あとはアボンダンシエリだけという場面だったが、ベティス戦とは異なり、アルゼンチン代表ポルテーロはアンリの股抜きを許さず、得点には至らない。
そして直後の26分、左サイドからのセットプレー。距離のある位置からだったがファーサイドのカタ・ディアスが頭で落とし、上手く抜け出したマヌがきっちり決めて1-0とする。バルサにとっては、重く苦しい先制点。フエラで勝ったことさえ1度しかないのに、逆転など可能なのか。嫌なムードがバルセロニスタを包み、試合はあまりにも予想通りに進んでいく。成す術を知らないバルサ、アゲインである。
前半はどうにか、そのまま1-0でしのいだ。まだ1点差、後半のやり方次第では、ポイントを持ち帰る可能性は十分にあった。しかし足りなかった激しさを、取り戻す方法がバルサには分からない。ハーフタイムにてザンブロッタを投入してみるものの、状況は何も変化しなかった。ロナウジーニョにせよメッシにせよ、ただどうにか自分で突っかけようとするだけであり、チームとしてのつながりは皆無。それは例えジョバニやボージャンが入ろうとも、改善されるものではなかった。
それどころか、むしろ後半の方が、前半よりもリズムは低下していた。パスはつながらず、プレスもなく、当然のことながらシュートもない。ラウドルップの繰り出す選手交代が効果を発揮しているのに対し、バルサの交代はただ選手が入れ替わっただけ。前線でのウチェの存在感は抜群で、たった一人でもそれなりのチャンスを作れる点など、バルサのスターたちとはあまりに対照的だった。バルサが同点に追いつくより、ヘタフェが追加点を決める方が容易。そういう印象で試合は進んでいく。
そして85分、ザンブロッタがリヒトへの無謀なスライディングで一発退場となり、バルサは終わった。そのままザンビーの居なくなった場所を空け、3バックにて対応しようとするも、カウンターでそこを突かれてドタバタ。89分にはまたもウチェの単独突破から、その左サイドにいたアルビンにサラリとボールを回され、アルビンはなんら労することなく2点目を突き刺して完全にゲーム終了。4分のロスタイムなど、ただ試合を形式的にプレーする時間が増えただけだ。
タイトルでも獲ったかのような大喜びをする観客たちを尻目に、うつむいてトボトボとロッカールームへと帰ってゆくバルサ選手たち。試合前に挙げていた課題を一切クリアすることなく、ただ無作為に失態をまたも繰り返し、傷口を広げていくライカー・バルサ。ライカーが戦術的にこの状況を打破できるとは考えにくく、今季の“ブーム”となっている監督途中交代というのも、そろそろ現実味を帯びてきたといえるだろう。少なくとも、クレの信頼は危機的レベルにまで達している。
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