バルサの希望、ボージャン・ケルキックが勝負を決めた。
試合はいつものパターンで進んでいく。引いて守ってくるレクレアティボに対し、余裕をもってボールをコントロールするバルセロナ。攻撃陣を引っ張ったのはロナウジーニョの位置に入ったイニエスタと、指揮者であるチャビだった。とはいえ、ゲームはギアが上がらないままに時間だけが過ぎていく。イニエスタが“イニエスティーニョ”として個人的に見せ場を作るも、ただそれだけだった。
バルサにようやくエンジンがかかってきたのは、時計が30分を刻もうかとしている頃だった。その前あたりから眠っていたレオ・メッシが目を覚ますようになり、レクレゴールに迫っていくようになるのだ。存在感を増していくメッシのパートナーは、チャビ。35分と37分に彼らはあわやという場面を作り出す。特に後者は決定的だったのだが、相手GKソレンティノの守りに阻まれ、得点には至らなかった。こうこうしているうちに、どこか不完全燃焼のまま前半は終了する。
そして後半。バルセロニスタにとって幸運なことに、ゲーム内容はまったく異なるものとなった。それはレクレが勇気を持って、前に出てくるようになったことが大きい。前半は後ろに引いてカウンターによる奇跡を待つだけだった彼らが、自ら勝負をかけてきたのだ。後半開始早々の46分、いきなりシマナ・ポンゴレがバルデスと1対1に。誰もが肝を冷やす場面だったが、バルデスは冷静だった。ポンゴレのコントロールが大きくなったのを見逃さず、すかさず前に出てボールをキャッチ。事なきを得ている。
このプレーに刺激を受けたのか、ハーフタイムにライカーに何か言われたのか、ここからのバルサはそれまでとは別チームになっていた。53分にはメッシがドリブルにてエリア内に切れ込んでいき、シュートを放つも惜しくもわずかに枠の外。さらにその直後にはメッシからグジョンセンに絶好のパスが送られるが、グッディはこのボールを上手くコントロールできず、チャンスを逃してしまった。攻めてはいるが、決められない。この嫌な流れを断ち切るべく、ライカーはひとつの決断を下す。グジョンセンを下げ、ボージャンを投入したのだ。60分のことだった。
これによって、試合は一気に変わった。まずは63分、コーナーからガビ・ミリートがヘディングにて待望の先制点を奪うと(ミリートのバルサ初得点。コーナーからの得点は今季初)、わずかその2分後にはボージャン!レクレのガードが若干下がったところを見逃さず、チャビからアンリへパスが送られ、そしてアンリの横パスを受けたボージャンがまるでベテランのような落ち着きで、これを突き刺したのだった。しっかりとコースを狙うあたり、少年の域を超えている。
このゴールに、カンプノウのスタンドは大いに沸きあがる。選手にはファンから絶大に愛されるタイプがいるが、メッシと同じくボージャンもまた、カンプノウから最大級の愛情を注がれる選手である。楽しみにしていたカンテラーノの、地元初ゴール。それを見れただけでも、この試合はまあOKとなってしまうくらいの価値はある。
ボージャンのこの追加点によって、試合は決まった。レクレアティーボは希望を失い、再び沈黙するようになる。ボールは完全にバルサ。3ポイントは確実な状況となってはいたが、フィエスタをさらに完全なものとするためには、もう少しだけ歓喜が足りなかった。そしてそれは、ちょっと物足りない形ながらも、81分に訪れる。MVPのひとり、レオのペナルティによるゴールである。これにてメッシは8得点目、ピチーチ競争でトップに並ぶことになった。
エヂミルソンの“黒い羊”発言によって大きく揺れることになった今週のバルサだったが、とりあえずこの勝利で最低限の仕事は果たしたといえる。前半は寂しい内容だったが、後半に目を覚まし、一気にゲームを決めたところはいい。そしてその殊勲者はいうまでもなく、ボージャンとなる。マドリーがムルシアで引き分けたため、首位との差は2ポイントに縮まった。あとはリヨン、エスパニョールと続くフエラでの勝負の2連戦を乗り切ることが出来れば、悪い流れも終わらせられるかもしれない。
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