前半はほぼ完全にバルサ色だっただけに、ここで決められなかったのが悔やまれる。勝てたデルビー。
ここ最近の勢いを見れば、今回のデルビーはエスパニョールに有利な展開になるのではないかと見られていた。しかしこういったタイプの試合において、前評判や予想というものはあまり当てになるものではない。実際にフタを開けてみれば、バルサが押して試合を進めていくのである。
フエラでのネガティブ連鎖を打ち破りたいバルサは、ペリコ戦をそのきっかけとすべく前半から積極的に攻勢に出て行く。そしてそれに対抗するエスパニョール。ゲームは序盤から、速いテンポで進められていった。
バルサはリヨン戦同様に、理想的な形で先制点を奪うことに成功する。前半6分、ピッチ右サイド中央付近でボールを手にしたメッシがそのままデフェンサを抜き去りながらゴールラインまで駆け上がり、丁寧なラストパスを供給。これを逆サイドにフリーでいたイニエスタが丁寧に流し込み、早々に1点のリードを手にするのである。ワンプレーで先制点を奪ったバルサ。これが非常に効いた。
エスパニョールはこのゴールにダメージを受けていた。攻めを急いだのか、ペリコたちのプレーには奥行きがなく、バルサ守備陣に脅威となるような場面を作れない。唯一得点の匂いがしたのは15分、左サイドから切れ込んだリエラがシュートを放った場面。しかしこれは枠を外している。
残りは一方的にバルサだった。攻撃の中心となったのはやはりボージャンとメッシ。18分にはボージャンからのパスを受けたメッシがシュート(わずかにポスト左)、24分には右に切れ込んだボージャンの折り返しをチャビがシュート(バー上)、32分にはチャビのフリーキックがバーを直撃し、跳ね返りへのボージャンのヘッドもバーに跳ね返されるという運のない場面もあった。そして42分、メッシがドリブルでエリア内に突っ込んでのシュートも、GKカメニに防がれている。
これらはいずれも決定的。一つでも入っていれば勝負はかなりバルサ有利となっていたのだが、ダメ押しが出来ないのが今のチーム状態か。1点差でどうにかしのいだのは、エスパニョールにとって朗報だった。
そしてハーフタイムが明けると共に、状況は一変する。ロッカールームでライカーが何をどう語ったのかは知る由もないが、後半のチームは前半のそれとは明らかに異なっていた。失うものはない、と前に出るエスパニョールに対し、バルサは中盤での止めが効かない。ズルズルと最終ライン付近まで突破を許すと、次々にシュートによって危機を招いていた。気持ち、動き、全ての面でペリコがバルサを上回っていた。
バルサはもはや、かろうじて最後にボールを弾き返すことしか出来ていなかった。どうにか無失点を保っていたものの、この調子でいけばゴールを割られるのは時間の問題。とにかくチームとしてのプレスが効いていないのだ。ボージャンを下げてロニーを入れたところで、それが解決するでもなく。そして68分、ついにバルデスの壁はこじ開けられた。左サイドを突破したリエラからのラストパスを、途中交代した直後のコロがズバッと押し込んだのだ。
この後は、両チーム共に疲れが見え始め、ゲームは大味になっていく。エスパニョールのアクセルが緩んだことでバルサもゴール前に近づけるようになってはいたが、どちらのチームも決定的なシーンまでは至らない。どちらかといえばバルサにゴールの匂いはしていたのだが、GKカメニがそれを許さないのだ。
71分、ロナウジーニョのフリーキックをカメニがジャンプ一本弾いてコーナーに。その直後のロニーによる叩きつけるヘディングは、カメニにがっちりキャッチされている。さらに81分にもカメニは踏ん張る。イニエスタのシュートは彼の手からこぼれ出るのだが、詰め寄ってきたロナウジーニョには自由なシュートを許さず。寸でのところで、カメニはそのボールを押さえ込んでいた。
ゲーム終盤、バルサは執念でエスパニョールゴールに襲い掛かる。ここでの主役はメッシだった。ペリコの守備ラインは疲れからかなり緩くなっており、メッシは右サイドで再三惜しい場面を手にしている。しかしメッシにもまた疲労が蓄積しており、元気な場面なら確実に決めているようなシュートが、勢いなくカメニにキャッチされるのだ。
そして試合終了のホイッスル。両チーム共に全力を出し切ってのエンパテではあったのだが、今回のデルビーは正直言って、バルサは勝っておくべき試合だった。熱いデルビーでの引き分けは決して悪くはないのだが、ここらで決められないところが現在のバルサを象徴している。手応えは掴んでいるので、どうにか次こそはこの流れを打ち破ってほしい。
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