クライシスのバレンシアに、完全勝利。唯一のマイナスはメッシの負傷である。
3日前のシュツットガルト戦にてMVP級の働きをしたロナウジーニョを、ライカーはメスタージャ決戦にて先発から外してきた。病み上がりのデコとザンブロッタもスタメンからは外し、中盤にはフィットしてきているグジョンセンを起用。このあたり、ライカーの以前にはなかった意思が感じられる。
ここ5試合で勝ちがなく、しかもいずれも無得点。監督交代&怪我人多発で崖っぷちに追い込まれたバレンシアは、このバルサ戦の出足に全てをぶつけてくると思われていた。先制点を奪い、メスタージャを味方につけることこそが、彼らが勝利を見出す可能性だったからだ。しかし手負いのコウモリは、前に出るのではなく、引いてカウンターの戦術を採用する。ボールはバルサが支配。まるでカンプノウでのゲームのようだった。
あの強かった日のバレンシアはいずこへ。彼らに当時の面影はまったくなく、その様は中小クラブ。中盤での圧力も弱く、バルサは序盤から積極的にカニサレスの守るゴールを脅かしていく。3分には早速メッシからの致命的なパスがエトーに通っていたし、8分にはコーナーからトゥレのヘッドがカニサレスを襲っている。簡単に侵入できる裏へのスペース。得点は時間の問題だった。
そして12分、バレンシア守備陣は総崩れになる。メッシからのパスを受けたエトーが、エリア内でデフェンサたちを翻弄。軽いターンでひらりひらりと障害をかわすと、あとはズドンと左足を振りぬくだけだった。さすがにカニサレスもどうすることなく、バルサ先制に成功。諦めの表情を浮かべる金髪ポルテーロが、印象的。まさにクライシスだ。
バレンシアの攻撃をしのぎ、先制点を獲得する。バルサ勝利のシナリオの第一弾は見事達成された。こうなれば、不調のチームはさらに浮き足立ってくる。あとはそこを徹底的に突いていけばいい。バレンシアはどうにかしようとする気持ちは伝わってくるのだが、それがプレーにつながらない。ボールは相変わらずバルサが支配し、“チェ”たちはまったく脅威とはなりえなかった。そして26分、エトーからチャビ、メッシと細かくボールをつないで再びエトーがすばやくシュート!中継カメラも驚くタイミングでのシュートにカニサレスは一歩も動けず、バルサはリードを2点と広げた。
先制点を決めてもリードを追加できず、苦しい展開になるという悪い癖を、エトーの存在が払拭してくれた。両チームの出来からして、この時点で勝負あり。自由にゲームを展開するバルサと、何も出来ないバレンシア。バルセロニスタにとっては最高の試合だったのだが、ハーフタイム直前、事件は発生する。40分、ダッシュを仕掛けた際にメッシが太もも裏を傷め、交代を余儀なくされるのである。初診では全治1ヶ月。当然ながらクラシコには出られない。クラックの負傷が幾らかの影を落としつつ、前半はバルサの完全なる優位にて終了している。
後半、このままでは終われないバレンシアは反攻を開始する。前半に比べ、ボール際への気迫が感じられるようになっていた。バルサエリアにも近づけるようになり、シュートも打てるようになったバレンシア。ただし決定機を作るには至れず、ゲームは徐々にバルサペースへと戻っていく。走るバレンシア、だがそれも大半が徒労だった。
バルサはメッシに代わって入ったジョバニが効いていた。53分には思い切りよいシュートで存在をアピールすると(カニサレスがかろうじてジャンプ一番、コーナーへ)、61分にはダメ押し点を演出。チャビからのグジョンセンへのスルーパスはデフェンサがかろうじてスライディングで弾くのだが、こぼれ球を受けたジョバニが守備陣を注意を一手にひきつけ、正面でフリーだったグッディへとパス。これをグジョンセンが流し込み、試合は完全に決着した。シュツットガルト戦、ジョバニは同様のシーンで強引にシュートを放ってGKに止められていたが、それを反省点としたようなプレー。
となれば、もうあとは次のクラシコのことを考えればいい。大役を果たしたエトーはお役御免となり、カード累積4枚のトゥレも、危険防止のためにベンチへ下げたライカー。あとは代わって入ったデコがコンディションを掴み、ボージャン&ジョバニの若者たちが経験を積めばよかった。バレンシアはエリア直近のフリーキックで惜しいチャンスを掴むが、強烈なシュートはバルデス正面。この試合も0点で終わり、無得点記録を580分にまで拡大している。クーマンに幸あれ。
偉大なるエトーが帰ってきて、ここぞのタイミングでゴールも決まっての0-3での快勝。相手がクライシス極まっている状況ではあるものの、力強くかつ効率的に勝てたのはチームにとって大きい。いい雰囲気で、必勝のクラシコに臨めることだろう。チーム状態は確実に上向いている。ただメッシの負傷だけがネガティブではあるものの、その離脱の影響は多くはないと思いたい。結局1分の出番もなかったロナウジーニョの、クラシコでの起用法も気になるところだ。
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