白いクリスマス。チームとしてマドリーに完敗し、ライカー&ロナウジーニョ時代に終焉の予感。
この一週間、大いなる謎とされてきた先発メンバーにロナウジーニョとデコは含まれていた。結局のところライカーはこの二人を最初から戦力として計算し、その刺激策として控え組での起用なりを行ってきていたのだ。やはりそうきたか。ある程度の予想が付いていただけに、驚きはなかった。ロナウジーニョ先発は支持していたし、そこには問題はない。これにより、ここ数試合で結果を出していたグジョンセンが“犠牲者”になった。
今年の最高記録となる98,248人が、カンプノウには押し寄せていた。すべてはバルサの勝利を信じ、その後押しをするためだ。史上初のフォトモザイクが、アスールグラナの戦士たちを鼓舞し、世紀の一戦の雰囲気を盛り立てる。
試合はキックオフ直後から、激しいチェック合戦となった。マドリーはやはり得意のカウンター戦術を採用してくる。自陣でプレスをかけてボールを奪い、一気に威力ある速攻でバルデスの守るゴールを狙う。攻撃にかける人数は決して多くはないものの、非常に的を得た効率的な攻めで、バルサ守備陣には息を抜けない展開。面白みはないが、怖さはあった。
徹底したカウンター戦術を採ってくるマドリーに対し、バルサの意図はいまひとつハッキリとしてなかった。まずは起点としてエトーを探すのだが、そこからのアイディアがない。しっかり守るマドリー守備陣にスペースはなく、単発で自信なさげなパスは、いとも簡単に白い網に引っかかっていった。ゲームは30分を過ぎる頃まで、これといったチャンスもなく進んでいく。
最初に勢いを得たのはバルサだった。マドリー守備陣に若干の隙が生まれ始め、背後へのパスが徐々に通りだしたのである。それまでは存在感のなかったイニエスタが、果敢な抜け出しでダイナミズムを生む。最大のチャンスは33分。エリア右をイニエスタが強引に突破し、中央へグラウンダーのパスを供給。これにロナウジーニョが、はたまたチャビが連続してシュートを放つのだが、それらはいずれもカシージャスの堅守の前に弾き飛ばされる。これが入っていれば・・・あとで嘆いてもどうにもならない。
試合は圧倒的にバルサのペースとなっていた。しかしここで一瞬の隙を見逃さないのが、マドリーというチームのしぶとさの所以である。35分、あれっという間に白組はカウンターを仕掛け、バティスタとニステルローイによる二人の攻めでバルサゴールを陥れるのだ。正確なワンタッチパスによるワンツーで野獣バティスタが抜け出し、技ありのダイレクトシュートがネット右隅へズドン。0-1、“よもや”の先制点をマドリーは獲得した。
このゴールの持つ意味は大きかった。勝利へと湧くカンプノウの空気を瞬時に凍りつかせ、さらに効果的なことに、リードを奪われたことでバルサのプレーは混乱状態となってしまったのだ。マドリーは落ち着き、バルサは慌てる。チームとしてどうりアクションを取ればいいのか、バルサは行き先を見失ってしまっているようだった。
1点のリードは痛いとはいえ、まだ十分に時間はあった。焦る必要はなく、チームはきっと反撃してくれるだろうとファンは思っていた。クラシコといえば、魂と魂の激突の場である。それは過去の試合が証明しているし、ここで根性を見せれなければ、そんなものは“クラシコではない”。しかし紳士ライカーに率いられるこのバルサには、そういった激しさが欠けていた。たかが1点をリードされただけで、大人しくなってしまうバルサ。逆にマドリーはそれを見て助長し、次々とカウンターを繰り出してきた。
バルサ攻撃陣は、明らかにゴール前へ急いでいた。知的なボール展開で相手守備網を崩すことなく、ただ前線へボールを送り込む。フォローはない。ゆえに簡単にカットされ、中盤と最終ラインの間に開いたスペースへとボールを送り込まれる。ロビーニョは悠々とドリブルを仕掛けながらチャンスを窺い、バルサゴールを脅かしていった。バルサに運があったとすれば、それはひとつの追加点も許さなかったことだ。得点差以上に、両チームの出来には開きがあった。
ライカーが行う選手交代も、効果を発揮しなかった。ロナウジーニョの出来は90分間引っ張るだけのものでは決してなかったが、彼と心中でもするつもりなのか、断固としてベンチに下げようとはしないライカー。かつての大クラックの、局面を打開したいという気持ちは分かった。けれどもひとりで突っかかるだけでは、マドリー守備陣をどうにかできるはずもない。足を痛めて引きずるセルヒオ・ラモスを料理できない時点で、彼のクラックとしてのイメージは過去のものとなっていた。
その他の攻撃も、ほとんど全てが個人による突破ばかり。3000万ユーロの男ペペにことごとくボールは弾き出され、すぐに倒れこむバルサ選手たちに、メフート・ゴンサレス主審がサービスの笛を吹いてくれることもない。ハッキリいって、得点が生まれそうな予感はゼロ。カシージャスが唇をかむ瞬間があるとするならば、白い守備陣が予想外のポカをするか、バルサクラックが奇跡のゴラッソを決めるかのどちらかしかなかった。けれどそんな都合のいいことが、クリスマスだからといって訪れるはずもないのが現実だ。
ジタバタと抵抗は試みるが、どうすれば自分たちのプレーが出来るのかはまったく掴めないまま終わっていくバルサのクラシコ。クリスマスの奇跡はバルセロニスタに降り注ぐことはなく、審判はあっさりと早めの笛を吹いて試合終了。決して負けられないクラシコでバルサはマドリーに完敗し、またひとつ悪夢としてクレの心に刻まれることとなった。ダメダメだった2007年を象徴するかのような、あらゆる問題点が噴出した試合。メンタルも、フィジカルも、戦術も、何もかもにおいてマドリーに劣っていることが証明された試合。どうやら冬の嵐は、避けられそうにもない。首位との差、7ポイント。両チームの現状を考えるに、この7ポイントはあまりにも大きい。
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