1/4ファイナルへ進出するという目的のみが達成された試合。最後まで執念を見せるセビージャを、ギリギリのところで防ぎきった。
サンチェス・ピスファンでアンリが記録した1ゴールが、とてつもなく大きな意味を持った1/8ファイナルだった。敵地でどうにか1点をもぎ取っての引き分けに持ち込んだため、バルサがカンプノウでの第2戦に勝利し、心地よく次のラウンドへ進む可能性はそれなりにあると思えた。しかし現実にバルサを待っていたのは、クレの予想を上回る苦戦と、青息吐息での0-0エンパテによる勝ち抜けだったのだ。
1/4ファイナルへ行くためには勝利、あるいは2-2以上の引き分けしかない前回王者セビージャは、カンプノウに不屈の闘志をもって臨んできていた。カヌーテ、ケイタら主力選手の不在はあったが、メンタル的に影響は与えてはいない。与える印象は昨シーズンまでの、強く恐怖感をもたらすセビージャだ。
ムルシア戦での快勝を受け、バルサはそこそこのパフォーマンスを行うだろうというファンの期待は、キックオフ直後に見事に裏切られる。開始わずか30秒足らずでセビージャに決定機を作られ(アルベスのクロスを、チェバントンが外す)、その後も試合を支配されつづけるのだ。バルサのプレーにはリズムがなく、これといった狙いもなく、正確性もなく、与えるイメージは中小アウェイチーム。むしろ試合をコントロールし、パスを小気味よくつなぐセビージャがバルサのようだった。
ただ、今季のバルサで何が信頼できるようになったかというと、それはミリート、プジョルを中心とした守備力である。セビージャは絶えずバルサエリアへと攻め込み、デフェンサたちを脅かしてはいた。しかし寸でのところでバルサ守備陣は相手の攻撃をしのぎきり、得点を許さない。観ているものには非常に疲れる展開ながら、どうにかこうにかネットだけは揺れることなく時間は経過していった。
前半に攻め続けたセビージャは後半に入り、若干の疲れを見せ始める。だが疲れてきたのはバルサとて同じことであり、ゲームの大局は前半と特に変化することはなかった。主導権を握るアンダルシアと、守勢に回るカタルーニャ。ライカーは56分と69分にそれぞれボージャンとデコを送り込むも、流れは変わらない。ボージャンの登場は前線にいくらかの動きとスピードをもたらしはしたものの、得点を奪うには至らず。対するセビージャも次々とデランテロを送り込んでくるが、こちらもバルサ守備陣を崩しきることは出来なかった。
そしてそのままスコアは動かぬまま時間だけが過ぎ去っていく。戦ってはいるものの、とにかく耐え苦しんでいる選手たちに向け、励ましの声を送るスタンド。残り時間は少なくなり、セビージャは最後の攻勢に出てきた。81分、アルベスの強烈なフリーキックがクロスバー直撃、85分にはついにやられたかに見えたナバスのゴールを、主審ペレス・ブルールが無効の判定。エリア内の混乱の中、ナバスの前にボールに触ったデュダがオフサイドの位置にいたとのことだが、バルセロニスタとしては心臓が止まりそうになる瞬間だった。
苦しみ、苦しみ、ひたすらに耐えた90分は終了した。2試合合計、スコアは1-1。バルサは第1戦でのアンリのゴールがモノをいい、どうにかこうにか1/4ファイナル進出への切符をもぎ取ること(だけに)成功した。とりあえずはその目標達成を祝いたいところだが、内容が内容だけに手放しでは喜べない。勝利によるムード爆発は起こりえず、不安と反省点を抱えながらの航海は続いていくことになるバルサ。悪いなりに結果だけはとれるようになった、とでも評価しておくか。
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