内容がない上に、結果も残せず。わずか1点のリードで満足したか、のらりくらりとプレーし、追いつかれる酷いゲームだった。
来週ミッドウィークのビジャレアル戦(コパ)を意識したのか、故障上がりの選手たちに無理をさせたくなかったのか、ライカーはこの試合も守備ラインに手を加え、さらにいい印象を与えない“チビッ子三銃士”による中盤を復活させてくる。そして案の定、プレーリズムは低調だった。ここ最近でも、最悪に部類されるといっていい。
前半は思い出したくもない内容だった。カーサでこれ以上無様なプレーは出来ないと気合の入るアスレティックは、バルサに勝利すべく力強く立ち向かってくる。その相手に、バルサは明らかに気持ちで負けていた。プレスは弱く、局地戦に敗れ、ボールに向かって走る量も少ない。序盤はビルバオが優勢に試合を進める展開。得点力のなさゆえに決定機は作れないのだが、主導権は常に彼らが握っていた。縦へのボールは、バルサよりも有効に使うビルバオ。
バルサはまたも試合に上手く入っていけずにいるようだった。最初のシュートが17分のメッシなのだから、その乏しさが分かる。中盤でパスをつなげず、マークを外す動きもないため、ボールの出し所がない。苦し紛れに前線へパスを送っても、簡単に相手の守備網に引っかかる。アイディアというものが、まったく感じられない攻撃に終始するバルサだ。試合は一時、決め手のない両チームによって停滞する。
ゲームが動いたのは30分を過ぎた頃だった。最初にチャンスを手にしたのはビルバオ。32分、左サイドを駆け上がったダビド・ロペスからのセンタリングを中央のアドゥリスがシュート、これはプジョルが止めるのだが、目の前にこぼれたボールに再びアドゥリス。バルデスとは1対1の状況ではあったが、シュートは惜しくもバー上空へ放たれチャンス生かせなかった。バルサとしては命拾い。
しかしゲームは分からないもので、その直後の35分、今度はバルサに決定機が訪れる。イニエスタから前線のメッシへと一気にパスが送り込まれ、GKアランスビアがどうにか弾いたボールをエリア正面にいたデコが拾う。デコはこれをさらりと右へ流し、詰めてきたボージャンがゴール左へと流し込んだのだ。バルサはまんまとリードを手にし、ハーフタイムを迎えることに成功する。
後半、出足は非常に良かった。46分、そして47分と、バルサは開始早々にいきなり2回のビッグチャンスを掴む。これらのいずれかが入っていれば確実に勝ててたのだろうが、そうはならないのが今のバルサだ。その後バルサはペースを緩め、ビルバオの攻めを受けてたつようになる。ビルバオの攻めに決め手がなく、迫力もないことから十分にいなせると判断したのだろう。
たしかにアスレティックの攻撃にはこれといった怖さはなかった。バルサ陣内に押し込んではいるものの、決定的な場面は作れはしない。スタンドからしばしブーイングが聞かれるほどに、ビルバオは持たせられているボールの活用方法を知らなかった。56分にはチャビのエラーからハビ・マルチネスに強烈なシュートを許してはいるが、これはバルデスが好セーブにて防いでいる。
その後ライカーはチャビに代えてエヂミルソンを投入し、中盤の強化を図るものの、バルサのプレーは何も変わらない。72分にはゴール前の混戦からプジョルがあわや2点目のシーンもあるのだが、これは相手デフェンサがかろうじて蹴り出してゴールならず。そして78分、余裕をかましていた(ように見えた)バルサにビルバオのお仕置きが下るのである。
見るからに落ち着きすぎていて、見るからに自信過剰だったバルサはカウンターから右サイドを突破され、ガルメンディアにセンタリングを許してしまう。中央にはジョレンテともつれ合うようにカバーするチュラムがおり、ボールはどちらの足に当たったのかよく分からないが、バルデスの守るゴールネットを揺らしたことだけは間違いない。油断と過信により、1-1に追いつかれたバルサ。まだ10分少々が残されてはいたが、正直このチームにリアクションを求めるのは酷だった。
その後のバルサには、3ポイントを獲りにいこうという意思は伺えた。しかし如何せん、それを可能とするだけの動きもなければアイディアもない。ボージャンに代えて送り込まれたグジョンセンは好いところを示せず、メッシもアンリも違いが見せられない。時間がすぎていく焦りとともにボールはただ前線へと放り込まれるだけ。同点によって勢いづくアスレティックに流れは傾いており、バルサにそれを覆す反発力は見られなかった。試合最後になって激しくプレスをかけても、遅いのだ。
そしてそのまま、ゲームは1-1で終了した。さらっと勝っているべき試合で、無力感だけを残す、不甲斐ない引き分け。よく分かったことは、このバルサは格下の相手にもフエラでは勝てない、機能不全のチームだということである。決して不運とはいえない、然るべき結果としてのエンパテ。リーガタイトルは事実上、終わりを告げたと言っていい。一波乱がくること必至の、あまりにも悲しい、負けに等しい引き分けだ。
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