後半は褒められたものではなかったが、終了間際に勝ちをもぎ取れたのは大きい。土砂降りに祟られたが、執念が報われた。
午後の間中、降り続いた雨によって水しぶきの上がるコンディションでの試合となったオサスナ戦。ゲームはライカーが前日に「私たちと当たるチームは、チェルシーのようにプレーしてくる」と警告していたとおり、守備を固めるオサスナをバルサが攻め立てる内容となった。
開始早々にオサスナに際どいシュートを放たれたバルサであったが、残る前半はほぼこちらペースで試合は進んでいく。ライカーが前日に指摘していたのは、ボールを奪ってからのすばやい縦へのボール展開による攻撃。必ずしもそれが実行できていたとはいえないものの、惜しいチャンスは作れてはいたアスルグラーナ。トリデンテ(メッシ、アンリ、ボージャン)が絡み合い、少なくとも3つの決定機は演出していた。
ただし、この日も先日のビジャレアル戦と同様に、相手ポルテーロ・リカルドが切れていた。オフサイドだったものの25分にはアンリの至近距離からのヘッドを防ぎ、28分にもボージャンの絶妙パスから抜け出したイニエスタのシュートをブロック。さらには33分、デコのフリーキックに合わせたアンリのヘディングを弾き返してもいる。
38分のボージャンのミドルシュートもリカルドによってコーナーとされ、おまけに40分、メッシのエリア内でのドリブル突破からのシュートも、あえなくわずかにポスト右。前半終了間際44分のイニエスタ(ドリブル)、デコ、メッシ(ドリブルでエリア侵入)、デコ(右からクロス)という美しい連係プレーも、最後ファーサイドへ駆け込んできたボージャンにわずかに合わず、0-0のままハーフタイムを迎えている。
得点の匂いはプンプンしていたのに、ネットが揺らせないバルサ。なんとなく嫌なムードではあったものの、まだチームやスタンドに余裕は残されていた。そのリズムでいけるなら、そのうちオサスナゴールは陥落すると思われていたからだ。
しかし後半に入り、ゲームは別の顔を見せるようになる。バルサのプレーは単調となり、ゴールはおろか、そこに至るためのチャンスすら作れない。雨に濡れて重くなったピッチも悪いほうに手伝い、流れるようなパス展開は皆無に。60分をすぎ、ライカーはアンリに代えてジョバニ、メッシに代えてロナウジーニョを投入するも、思うようにリズムは変えられなかった。
そして次第に雨脚は強まり、バケツをひっくり返したような大雨に。オサスナはしっかりと守りを固め、これは天もバルサに味方していない、今日はこのまま引き分けか、との空気がカンプノウを支配していく。焦りと疲れがバルサ選手たちを飲み込み、どうにかオサスナの守りを崩そうと試みはするものの、有効打は生まれない。残り時間は刻々と過ぎ去り、ほとんどすべてのバルセロニスタが失意の底に沈もうとしていた。しかし88分、劇的なドラマが発生するのである。
救世主は、その数分前に大した期待を生むことなくピッチに登場していたチャビだった。引きこもるオサスナに最後の連続攻撃を仕掛けていたバルサ。チャビから左サイドのドスサントスへと大きな展開のパスが渡り、メキシカンはポストとなってイニエスタにボールを送る。イニエスタのシュートはデフェンサの足に弾かれるものの、そのこぼれ球をチャビが丁寧にインサイドでダイレクトボレーを放ち、これがゴール左へと突き刺さるのである。
失望を覚悟していた時間帯での、まさかまさかの決勝ゴール。焦り、苦しみ、苛立ち、しんどいゲームだったものの、最後にこのような得点を決めて勝点3を収められたことは、今後の自信にもなるだろう。昨年のマドリーのようなしぶとい勝ち方が出来たのは、イマイチな後半であったことを差し引いたとしても評価は出来る。このようなドラマが起き、それがひとつずつ重なっていけば、それだけ流れもバルサへと向かってくる。これでマドリーまで6ポイント差。この調子でいけば、また次なるチャンスも巡ってくるだろう。挫けずにいれば、きっといいこともある。
|