前半は圧倒的にセビージャの試合。後半になり挽回するも、チャビのゴールだけでは勝利は遠い。フエラでやはり結果が出せないバルサ。
様々な理由から主力選手が9人ベンチから外れるという“異常事態”により、ライカーは変則的な先発メンバーを組んでくる。右ラテラルは2ヵ月半ぶりの出場となるウラゲー、ピボッテは今季初先発のエヂミルソン。代表から戻ったばかりのジョバニが右に入り、メッシが中央の布陣だった。
結果からいって、この先発メンバー&起用法は失敗だった。ゲーム勘のないウラゲーはディエゴ・カペルにとっての障害とはなりえず、チュラムのマークもいまいち。中盤は機能せず、偽の9番となったメッシは居ないも同然、アンリはほぼセントロカンピスタと化し、ジョバニにも精彩はなかった。
コパでの対戦時は、これとほぼ同じ選手起用で結果は出せているライカー。しかしエトーの不在はチームパフォーマンスに大きな影響を与える。前半1分こそ積極的な姿勢を見せ、可能性を感じさせたものの、その後はどんどんと尻すぼみ。30分を過ぎる頃からは、見るに耐えない状態へと陥っていくのだ。
前半最後の15分は、バルデスショーの様相を呈していた。29分にはダニ・アルベスからのロングボールをカヌーテがエリア内でポストとなり、ミリートが弾いたところをルイス・ファビアーノ。バルデスは間一髪左足でセーブ。32分にはディエゴ・カペルに左サイドをえぐられ、カヌーテがどんぴしゃで右。これはバルデス正面でどうにかキャッチ。セビージャは自由自在にバルサ守備網をかいくぐり、危険なシュートを連発するようになっていた。時間の問題ムード、高まる。
そして34分、来るべくしてその瞬間は訪れる。アルベスからヘスス・ナバスと右サイドでつながれ、ナバスの鋭いグラウンダーのセンタリングに、ファーポストに走り込んでいたカペルが合わせてバルデスの壁を打ち破るのだ。ウラゲー、背後を取られた。怒涛のラッシュで好機を連発したセビージャに対し、バルサのシュートは4分のメッシ、20分のジョバニの2本のみ。よくこれを1-0で耐えられたものである。
後半に入り、そのままで好いはずのないライカーは勝負をかけてくる。ピボッテを省略し、ロナウジーニョをトップ下に配置する、いわゆる奇策。猛威を振るうセビージャに対しては無謀とも思えたが、これが意外にも功を奏するのだった。まったく怖くないバルサの攻撃に、セビージャは余裕を感じたのだろう。守ってカウンターを仕掛ければいいと考えたか、あるいはバルサの奇策の様子を見たか。セビージャに前半の勢いはなく、バルサはゲームを支配し始めた。
前半の苦労がウソのように、ボールをつなぎ、回せるバルサ。決め手は多くはなかったが、リズムは好転していた。しかしエトー離脱以来、6試合連続で1点以上奪えていないバルサの攻撃にゴールは遠い。58分にはアンリが左太ももを痛めたことにより、グジョンセンを投入。とりあえずはロナウジーニョをプンタに配するが、効果は発揮しない。チャンスといえば、61分のミドルシュートくらいだった。
アクセルを吹かさないセビージャ、攻め手のないバルサ。ゲームは中盤での小競り合いに終始していく。ここまでは、いってみればセビージャの計算内だろう。しかし75分、試合は動く。その2分前にあわやマルケスのオウンゴールをしのいでいたバルサ。チャビからボールを受けたグジョンセンがポストとなって右のメッシへ叩き、スペースへ走り込んだチャビのミドルシュートがパロップの壁を崩したのだ。さらにその2分後にはケイタが2枚目のカードで退場。流れはバルサに傾いていた。
バルセロニスタの心に、「いける!」の気持ちが強まる。一人少ないセビージャに対し、明らかに勢いを掴んだバルサ。カンペオンに輝くチームであれば、ここは是非ともそのまま相手を飲み込み、勝利を手にしておくところだ。だが“1点しか獲れない病”に罹っているバルサにゴールは遠い。41分には右コーナーからファーのメッシがシュートを放つも、角度がなさすぎゴール前を横切るのが精一杯。ロスタイムにはディエゴ・カペルによる単独カウンターの見せ場もあったが、こちらもネットを揺らすことなく、試合はそのまま1-1で終了している。
間違いなく負けたと思った前半の出来からして、引き分けで良しとするか。あるいは10人の相手に押し気味に進めながら、勝ちきれなかったことを無力とするか。前後半のそれぞれを両チームが支配し、エンパテは妥当な結果と言えよう。両チームの痛み分け。しかし首位マドリを追撃するには1ポイントも落としたくないバルサにとって、この引き分けは非常に痛かった。結局、フエラで勝てずにポイント差を広げられるパターンの繰り返し。
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