ふたつの“疑惑の”ゴールにより、サラゴサを破る。内容はこれまでと変化なく、芳しいとはいえない。
この日バルサは、ベティス戦にてマドリが散ったことを知ってのキックオフとなった。勝てばゲーム差は再び5ポイントにまで縮まる、きわめて重要な一戦。しかしライカーは明らかにチャンピオンズを意識した先発メンバーを起用してくる。トリデンテの左はイニエスタではなく、ドスサントス。先発濃厚とみられていたロナウジーニョがベンチスタートだった。
そしてキックオフ。バルサのプレーからは頑張ろうとはしている印象は得るけれど、気持ちに反してパスが全然つながらない。いつものようにボールはある程度自由にさせてはもらえるものの、サラゴサの守備陣を動揺させるような機会は作れないのだ。むしろ決定機はサラゴサ。5分のミリートのシュートに始まり、6分にも左サイドをえぐられ、ファーのセルヒオ・ガルシアにあわやのシュートを放たれている。
バルサは例のごとく、自陣近くで危機的状況を作られはするものの、デフェンサたちの最後の踏ん張りと気合で跳ね返すという展開を続けていた。中盤で当てもなくボールを回してはクリアされ、カウンターによってエリアに迫られるという繰り返し。バルサが最初にチャンスと呼べるものを作ったのは25分。メッシからの深い縦パスに飛び出したジョバニが、至近距離からシュートを打ったのだ。しかしこれはGKセサルの身体を張った守備により、無得点。
だが、この日のバルサにはちょっとした運があった。34分、デコからの浮き球スルーパスにアンリが抜け出し、胸でトラップしたボールをすぐさまゴールに流し込んだのである。見事なボールコントロールによるシュートだったが、反バルサメディアは“ハンド臭い”として不満を漏らしている。
サラゴサにとって痛かったのは、いくつもの決定機と41分のマルケスのファールによって手にしたペナルティを、モノにできなかったこと。この日は、ディエゴ・ミリートにとっては厄日だったようだ。ディエゴのペナルティシュートは枠を大きく上方に逸れ、バルサラッキーにもリードを奪って前半を終了。
そして後半だが、バルサは相変わらずだった。どこか気合が入ってないような、1点のリードで満足してしまっているような、どうにもピリッとしないプレーを繰り返すスター選手たち。サラゴサは前半同様にチャンスの数ではバルサを圧倒しており、いずれゴールは割られそうな雰囲気はプンプン漂っていた。そして52分、その瞬間は呆気なく訪れる。
その直前にミリートの至近距離からのシュートを気合で吹っ飛ばしていたバルデスだったが、すべてのシュートを彼が止められるはずもない。カウンターからセルヒオ・ガルシアに最高級のスルーパスを送り込まれ、オリベイラが角度のないシュートを突き刺して見せたのだ。ゲームを振り出しに戻すゴラッソ。ここ7試合2点以上とっていないバルサに、暗雲が漂う。
同点に追いついたサラゴサは勢いづき、その後も優勢に試合を進める。65分にはバルデスのセットプレーのクリアミスが超フリーのセルヒオに渡るが、ここは守備陣が執念のブロックで九死に一生を得た。そして75分を過ぎる頃から、サラゴサはガス欠によってリズム低下。しかしライカーにはどうもこの試合にかける意気込みがないようで、保守的な交代を行うにとどまっている。ダイナミックに駒を動かし、勝利をもぎ取ろうという意思は感じられなかった。
ただ、この日は審判が“決定力”を持っていた。アンリの先制点もやや微妙だったが、82分の追加点はもっと微妙。エリア内でのファンフランの左肩トラップがハンド判定となり、ペナルティが宣告されたのである。ほとんどの人が厳しすぎると見るであろうジャッジにより、バルサ追加点獲得。ペナルティ職人であるロナウジーニョが、ゴール左隅へ流し込んだ。
その後、ロナウジーニョが絶妙のトラップによって決定的チャンスを手にするも、シュートは惜しくもポストわずかに右。どうにか同点に追いつきたいサラゴサは最後の粘りを見せるも、エリア近くでいくつかのファールを得るのが精一杯。そのままゲームは1-2のまま終了した。
バルサ、褒められない内容ながらも、黄金の3ポイントを確保。マドリとの差はふたたび5ポイントにまで縮まり、逆転優勝への望みはつながったことになる。ただし、プレーが散々だったために正直、意気の上がる勝利とはいえない。印象としては負け試合だった。まあ昨年ならおそらくは負けていたゲームに勝てたことで、すなおに大満足しておくべきか。セルティック戦は、もう少しいいゲームを希望。
|