もっと大差で勝てた試合だが、なぜか2度のリードを許す展開。最後は地力の違いを見せ、“順当”に逆転勝利を決めた。
これまで1点獲るのにヒイヒイ言ってたのがウソのように、“スペクタクル”なゲームだった。序盤から、試合を支配したのはバルサ。小刻みにパスをつなぎ、相手エリアへと到達した回数も少なくはない。しかし皮肉なものでその支配も前半は特に大きな意味を持たず、2度のリードを手にしたのはセルティックだから不思議なものだ。バルサがボールをコントロールしながらも、前半のスコアは2-1。けれどこの日のバルサには、いつにない“余裕”があった。
開幕戦以来、今季2度目となる“クアトロ・ファンタスティコス”揃いぶみとなったセルティック戦。ライカー(制裁中でスタンド観戦)は病み上がりのエトーをベンチに置く決断をする。ロナウジーニョは年末のクラシコ以来となる先発復帰。そして徐々にではあるが、そのプレーには改善の兆しも見えていた。以前のキレやスピードはないものの、ゲームの随所に顔を出し、良質のパスを仲間たちに供給。今後に期待が持てそうである。
そして2ゴールを決め、“ゴール欠乏症”から抜け出したメッシと、アーセナル時代風ゴラッソによって勝負強さを見せたアンリ。中盤もこの日は機能し、自慢の攻撃力に花咲いたのは明るい話題だ。
ただし、この日は先週末のサラゴサ戦とは逆に、セルティックが運に恵まれていた。最初に決定機を作ったのはバルサだった。13分、セルティックのエリア内でのパス交換をアンリが奪い取り、切れ込んでバックパス。これにイニエスタがエリア際から強烈なシュートを放つのだが、GKボルック正面で弾き返されている。さらにデコのコーナーを胸トラップしたアンリが豪快にシュートを放つも、19歳デフェンサ・カディスの顔面クリアでゴールならず。ツイているセルティック。
彼らの運は続く。その直後の16分、セルティックのこの日唯一といっていい、粘っこい攻撃。彼らはバルサのロングボールをカットした後左サイドを中心に攻め上がり、いくつかのブロックにあいながらも粘り、最後はヘッセリンクがダイビングヘッドを押し込むのである。なかなかに美しいゴールではあった。
しかしこの日のバルサは黙ってはいない。そのわずか2分後、メッシの反撃弾。アビダルの上がりから始まる長い攻撃を経て、メッシがエリア内でデコと華麗なるワンツー。詰め寄るボルックをあざ笑うかのように、左足アウトサイドのバセリーナにてネットを揺らすのだった。デフェンサのスライディングも屁のカッパ。すごい。
ゲームはその後もバルサは支配する。けれども追加点はなぜかセルティック。37分、バルサ守備陣に追われたマクドナルドがそれとなく送り込んだ浮き球の縦パスを、ロブソンが絶妙な具合に頭で合わせ、ループとなってバルデスの壁を越えてしまうのだ。スコアは2-1となり、そのまま前半は終了する。
そして後半。ハーフタイムをすぎると別人のようにショボくなってしまうことも多いバルサではあるが、この日はちょいと違った。バルサのゲーム支配には特に変化はなく、その上でゴール前での決定力が増したのである。同点とするのに、時間はさほどかからなかった。52分、ロナウジーニョが相手パスをカットすると(!)すばやく前方のアンリへとパス。アンリは持ち上がり、エリア左隅から見事にコントロールされたボールをネット右に突き刺して見せたのだ。美しくカーブのかかったゴラッソ!この辺はさすがとしかいいようがない。
その後もチャンスは、一方的にバルサ。シュートに至るプレーにはロナウジーニョが積極的に絡んでおり、明るい兆しとなっている。そのロニーは73分、エトーと交代でお役御免。そしてそのエトーが早々に決勝点のお膳立てをするのだから、流れはいい。79分、自陣深くのチャビからの完璧な縦へのスルーパスに右サイドのエトーが走りこみ、センタリング。これは相手DFに阻まれるのだが、そのパチンコのように二人に当たったこぼれ球がメッシの元へ転がり、彼は冷静にチェックを一人かわし、ゴール左隅へシュートを決めてしまった。なんて冷静さ、なんてフェイント。これぞクラックのなせる業だった。
随所に好プレーが見られ、好い時のイメージを取り戻したバルサ。ゲームは2-3の逆転勝利となり、1/4ファイナル進出へ大きく前進した。カンプノウでの第2戦では、是非ともボージャンの大会最年少ゴールが見たい。
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