爆発するアグエロを止められず。序盤は支配するも決められず、アトレチコ反撃の波に飲み込まれた。
この試合に勝利し、同時にウエルバでマドリが散れば、バルサが今季初めて首位に立てるこの試合。ここ10日の勢いを強固なものとしていく上でも必勝が求められていたバルサだったが、ライカーはここで試験的な先発メンバーを送り込んでくる。メッシをベンチに置き、ロナウジーニョを中央、アンリとエトーがサイドという前例のないトリデンテを送り込んだのだ。
ロナウジーニョの役割は9番ではなく、やや引き気味の位置でボールを捌いていくことだった。そしてゲームはよく見るパターン、つまりはボールを圧倒的に支配するも、決定機には恵まれない展開で進んでいく。ボール支配は圧倒的にバルサ。アトレチコはこのところの悪い流れを引きずっており、自陣からまともに出られないような状況だった。しかしバルサはその支配を活かせない。攻撃が中央から左ばかりの単調なものとなり、リズム変化も乏しかった。ただボールを回しているだけでは、決定機は作れない。
バルサは9分のオフサイド判定となったエトーのゴール以降、これといったチャンスもなく、両チームともに見せ場を作れぬまま試合は進んでいく。だが、クレ歓喜の瞬間は突然訪れた。29分、右サイドからのチャビのセンタリングを中央のロナウジーニョが、見事なチレーナによってネットに突き刺すのである。完璧なタイミングでの、完璧なチレーナ。これほどに美しいオーバーヘッドは滅多にお目にかかれるものではない。ロナウジーニョにマジックが戻ってきた、ゴラッソだった。
いまいちのアトレチコに、先制点を奪ったバルサ。試合はこのままバルサペースになっていくだろうと思われた。多くのクレは、ここで勝利を確信しただろう。しかし幸せな時間は長くは続かなかった。わずか6分後には、アトレチコに同点とされてしまうのである。バルサは先制点によってむしろ、リズムを崩してしまった。フットボルに過信や油断は絶対禁物なのだ。
皮肉にも失点をしてから、アトレチコはゲームの主導権を握っていく。それまで何も出来なかった彼らが、バルサ陣内に押し寄せ始めるのである。そして35分、アグエロのシュートがプジョルの足に当たり、コースが変化してバルデスの壁を越えてしまうという不幸な失点。これはもらい事故のようなものではあったが、アグエロを覚醒させたのがまずかった。ここからはクン劇場となる。
その6分後の41分、そのアグエロからエリア内のマキシ・ロドリゲスに柔らかいパスが通り、マキシがファーの左ネットを揺らしたことで、アトレチコはあっという間に逆転に成功。2本目の決定的シュートで2点を取ってしまうのだから、非常に効率はいい。乗りに乗るアグエロ。さらにこの活躍も、まだ序章に過ぎなかったのだから始末が悪かった。
ハーフタイム後も、試合の流れは変わらなかった。アトレチコがペースを握り、バルサは後手後手になる展開。バルサにとって悪かったのは、いつもは鉄壁であるカピタン・プジョルがアグエロにしてやられているのにショックを受けたのか、さらに彼らの得点を後押ししてしまったことだった。61分にはエリア内でのスルーパスへの競り合いの中、アグエロを背後から明らかに押し倒すという信じられないプレーにてペナルティ献上。これをフォルランが決め、リードは2点と広がってしまう。
さらに70分、高い位置での攻防戦。ここでもアグエロはプジョルのマークをくぐり抜け、さらにはミリートまでもをあっさりと抜き去り、そのままゴール正面エリア際まで切れ込んで右ポスト脇へとシュートを突き刺す。もうどうにも止まらない、猛威をふるうアグエロ。今後もバルサ(プジョル)キラーになりそうな、クンの大暴れだった。
流れを変えようと選手交代をした、その数分後に追加点を決められているのが痛かったバルサ。しかし4-1となってからの時間帯はしばし、バルサペースで進んでいく。73分、ピボッテに下がっていたイニエスタから、飛び出すグジョンセンに絶妙の浮き球スルーパス。彼のシュートは守備陣に弾かれるが、こぼれ球をエトーが押し込んで4-2。その後もバルサの攻勢は続き、あわや3点目のシーンが少なくとも3回ほど生まれている。ただし決められなかったことで、ゲームは次第に沈静化。そのままアトレチコが逃げ切り、バルサは2008年初黒星を喫することになった。
ウエルバではレアル・マドリがロビーニョの2発などで勝利し、バルサとのポイント差は再び5へと拡大。自慢にしていた守備陣、とくにプジョルがアグエロにしてやられたことでダメージもでかい。先制点を奪っておきながらアクセルを緩め、そのまま敗北という流れもよろしくなかった。今後数日はまた議論が再燃しそうだが、バルセロニスモを覆っていた幸福感を冷ますには、ちょうどいいビンタか。ここ1週間が出来すぎていたと思えば、そう落ち込むことはない。気分は悪いが、逆転を目指して一から出直していくだけのことだ。シーズンはまだ先がある。チャンスは再び訪れよう。
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