1/4ファイナル進出は楽々決まるも、メッシ負傷によって沈痛ムードのFCバルセロナ。ピッチ去り際のメッシの涙が、クレの心を悲しみに染める。
本来であれば、1/4ファイナル進出を決めてお祭りとなるはずであったセルティック戦は、まったく逆の悲痛なムードに包まれることとなった。悪夢の主人公は、リオネル・メッシ。アトレチコ戦で先発から外れ、万全を期したはずのクラックを怪我の悪魔は容赦なく襲う。33分、ザンブロッタを壁パスを交わしたメッシは突如プレーを中断し、ピッチに倒れこんだのだ。以前も経験したことのある、不吉な痛み。レオはその後に自分を待ち受ける運命を直感した。涙は止まらなかった。
プジョルに抱え上げられ、エトーやアンリからの励ましの言葉を受けながら、泣き濡れつつピッチを後にするメッシ。その様子を見るものは、誰もが最悪の事態を想像しただろう。そして初期診断で彼は左太もも裏の筋断裂を宣告される。12月15日のバレンシア戦で負った全治1ヵ月半の怪我と、同じタイプのものだった。願わくば、ダメージの度合いが軽いものでありますように。
試合自体は、バルサにとって余裕の展開だった。バルサ相手で縮こまっているセルティックに、開始早々の3分に先制点をゲット。ゆっくりとしたパス回しから、エリア際でいっきょにスピードアップ。正面のチャビから左のロナウジーニョ、そのヒールパスをシルビーニョがセンタリングし、詰めていたチャビが右足アウトサイドで合わせ、ふわりとボールはセルティックゴールへ転がり込んだのである。
このゴールでバルサは楽になり、自陣に引くセルティックを圧倒、翻弄していく。セルティックは3点獲る以外に勝ち抜ける道はなかったのだが、内弁慶な彼らは前に出てこれない。テクニック的にも両者には大きな差があり、まさに格の違いというのが如実に現れたゲームだった。
前半は完全にバルサのゲーム。速いプレスとパス回しにセルティックは手も足も出ない。点差を広げるチャンスは幾度もあったのだが、アドレナリンがビンビンに出ていないことが影響したのだろう。最後の精度、激しさはいまひとつ精彩を欠き、追加点は生まれなかった。すでに決まった試合は、えてしてそういうもの。先制点が早かったことにより、ゲーム自体の面白みは失われていた。
そして33分、悪夢の瞬間が訪れる。27分にもレオは右足首をひねるように倒され、バルセロニスタをヒヤッとさせていたのだが、その6分後の怪我のダメージはそれどころではない。メッシの負傷退場からのゲームは、もはや虚ろなものだった。代わりに入ったのがボージャンではなくアンリだったことも、ゲームから興味を失わせる大きな要因となっている。ライカーはこのところキレの落ちてきているアンリを、若く、そしてチャンピオンズ最年少ゴール記録のかかったボージャンよりも優先した。これには失望するしかなく、その後の観戦意欲を著しく減少させた。
この試合はチャビが先制し、セルティックが反攻の意思を見せなかった時点で終わっている。それにメッシの負傷、ボージャン出番なしが加われば、もはや見るべきものはない。大方の予想通り、セルティックはバルサにとってなんら脅威となることもなく、それゆえにアトレチコ戦よりもこちらを優先したテクニコの判断に不満が残る。1/4ファイナル行きという最低限の目標は達成したバルサであったが、それを上回る精神的ダメージがカンプノウに深い影を落としている。
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