3ポイント以外に価値のない試合で、気迫なく引き分ける。コーナーからの2失点というのがいただけない。
前日に首位マドリが散っていたため、ポイント差を縮めるためにも、落ち込んだ勢いを盛り返すためにも、勝利だけが求められていた試合だった。試合前にはラポルタも、「なにがなんでも勝利を」と檄を飛ばしている。とにかく今回は3ポイント確保が超重要課題であり、状況へのチームのリアクション力が試されている試合だった。
本拠地では強豪を撃破してきているアルメリアは、この日も序盤から激しいプレスにてバルサに圧力をかけてきた。だがバルサとて、それで気圧されることはない。相手のチェックはかなり速かったが、勝負を挑み、ボールを回し、ゴールを奪い取ろうとの意思を見せるバルサ。そしてそのご褒美は、早い時間に訪れた。
16分、左サイドのイニエスタがドリブルで中央へ切れ込み、機を見て鋭いシュートを放つ。これはGKディエゴ・アルベスに弾かれるのだが、こぼれ球に詰めていたボージャンが押し込んで先制点ゲット。アルメリアは“1-0勝ち”を得意とするチームであり、この先制点はバルサを勝利へ大きく近づける一発になると思われた。
しかしバルサが良かったのもここまでだった。悪い時のマドリがそうであるように、やられる時のバルサがいつもそうであるように、比較的楽にリードを奪ったことで気を許してしまい、明らかにアクセルを緩めてしまうのだ。追加点を決め、相手戦意喪失させるまでは攻めの手を緩めないとの過去の教訓を、今回も生かせないバルサ。ここからはアルメリアの怒涛の攻撃が始まっていく。
たった1点で満足してしまったバルサに対し、アルメリアの連続攻撃は鋭かった。ボールを奪えば一気にカウンター。両サイドも上手く活用し、後手後手に慌てて対処するバルサのエリアへと、彼らは次から次へと襲い掛かっていった。こうなると、ダメバルサの守りが決壊するのも時間の問題。ついには32分、コーナーキックからプリドがヘッドで合せて同点とするのだった。何故だかプリドは完全ノーマーク。あれだけ自由にさせれば、点が入らないほうがおかしいだろう。
同点にはされたが、ゲームはまだ1時間が残されている。バルサがリアクションを示すには十分な時間があった。しかしひ弱くなったこのチームは、ここから意地を見せられない。むしろ追加点のチャンスがあったのはアルメリアの方であり、バルサは変わらず眠ったまんまだ。唯一、チャビの見事な縦へのスルーパスに反応したボージャンがエリア内でGKと1対1になる場面があったが、残念ながらカンテラーノのシュートはアルベスの攻守に阻まれゴールならず。。。
後半、バルサはほんの少しながら挽回を見せるが、大勢は変化してなかった。ボールを無駄に支配し、チャンスに結び付けられない時間が続く。この状況を打破するため、ライカーはさっぱりだったエヂミルソンに代え54分、練習でいい動きを見せていたアンリをピッチへと送り込む。そしてこれが、そうそうに効果を表すのである。珍しくズバッとハマるライカー采配。56分、チャビの美しいパス展開により左サイドのアンリへとボールが渡り、マークをかわしたアンリから中央へキラーパスが送り込まれる。これにニアのエトーが詰め寄り、アルメリアのネットを揺らしたのだった。
前半の教訓があるバルサは、ここで満足することなく、更なる追加点を目指してアルメリアゴールへと向かっていく。しかしバルサが順調にゲームをコントロールしようかと思われた時に、それをぶち壊してくれたのが審判さんだった。70分、それはちょっと厳しいでしょという判定により、ミリートが2枚目のカードで退場処分。このジャッジでバルサは明らかにおかしくなった。
守備の要を欠き、さらには仕方ないとはいえボージャンを下げたバルサ。ここからはもう完全に、一方的なアルメリアのゲームだった。得点力のないチームだけに“これ!”といったチャンスは作り出せない彼らだったが、練習をかなりしているのであろうセットプレーは、常に危険な匂いを漂わせていた。そして悪夢の同点弾もまた、コーナーからだった。84分、キッカーは同じコロナ、ただし仕上げのヘッドは途中出場間もないウチェ。バルサにとっては余りにも痛い2点目が、リアクションの余裕のない時間に叩き込まれた。
いくらアルメリアがセットプレーに気合を入れているからといって、1試合に2ゴールを同じコーナーから許していてはいけない。バルサのセットプレーに対する取り組みの低さが、露呈した試合だった。フリーキックやコーナーをたくさん手にしているのに、まったく得点の匂いがしないバルサと、対照的なアルメリア。金曜には非公開でセットプレー練習をしたバルサではあったが、所詮は付け焼刃なのだ。
そして試合はそのまま終了。バルサはまたしてもマドリからの贈り物を有効活用することが出来ず、無力なイメージだけを世に与えることとなった。たしかにミリートの退場は厳しかっただろうが、それは言い訳にはならない。むしろエンパテという結果は試合の内容を反映したものといえ、チームとしての姿勢は圧倒的にアルメリアがバルサを上回っていた。ここ3試合で、バルサはなんと8失点。鉄壁を誇っていた守備陣が崩れると、かくもポイントを取れなくなるものなのだ。
マドリとのポイント差は1ポイント縮まったが、それは慰めでしかない。逆に、気がついてみれば2ポイント後ろに迫り来るビジャレアルの影。ああこれは危ない展開になってきた。ラポルタさん、そろそろ心の中で決断をしておいたほうがよさそうですよ。
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