またも守りが崩れ、大事なタイトルにサヨウナラ。
リーガではアトレチコとビジャレアルに連敗し、アルメリアにも引き分けていたバルセロナ。チームは明らかに調子を落としており、このバレンシア戦もそれを引き継いだ形となった。それらの試合と同じように、ただただボールをコントロールするだけでアイディアもなく、守備の隙を突かれてあっさりと失点を許す。不意にボールをカットされるたび、どたばたと慌てて守りに戻る様は、かつて鉄壁といわれたチームと同じなのかと、目を疑いたくなる。
とはいえ、椎間板ヘルニアという爆弾を抱えながらも、痛み止めの注射を打ってゲームに出場したトゥレ・ヤヤは立派。これこそチーム精神、プロ精神、自己犠牲精神の鑑となる行為であり、他の選手たちにも是非手本としてほしいところだ。
カンプノウでの第1戦を1-1と有利なスコアで引き分けていたバレンシアは、この日は最初から、“がっちり守ってカウンター作戦”を実行してきた。ボールの支配権はバルサに譲り、忍耐強く守りつつ、必殺のカウンターを見舞うチャンスをじっと待つ。バルサにとってこれは、予想のついたことだった。じっくり知的に攻めれば、おそらく攻略は出来たはず。しかしそれ以前に、あっさりとカウンターを食らってしまってはどうにもならない。
バルサにとって不幸だったのは、3分のコーナーキックでのミリートのヘッドが、得点にならなかったことだ。ミリートのヘディングは無人のゴールへ入るかに見えたのだが、寸でのところでホアキンがクリア、これがクロスバーに当たり、奇跡的にバレンシアは難を逃れたのである。これが得点になっていれば、ほぼバルサよりのシナリオとなっていただろう。
しかし現実はその逆を行った。命拾いをしたコウモリ軍団はその後勢いをつけ、15分頃から連続してバルサゴールを脅かし始めるのだ。そして早々に彼らは収穫を手に入れる。17分、バルサ守備陣の不十分なクリアボールを、バラハがエリア際から強烈なミドルシュートで叩き込んで先制。バルデスはどうすることも出来なかった。効率よく、バレンシアは大きな1点を手に入れた。
これにてバレンシアの守備戦術はさらに徹底されていく。がっちりと守られ、リードを奪われ、気持ちばかりが焦るバルセロナ。30分にはチャビのフリーキックに頭で合せたミリートが、36分にはアビダルの強力なロングシュートがどうにかチャンスを掴むのだが、いずれもネットを揺らすには至っていない。逆にバルサは44分、何故だかエリア内でフリーとなったマタがカウンターからゴールを決め、ほぼ試合の行方を決定付けてしまうのだった。なんという呆気なさ。これでは勝てない。
前半を終え、スコアは“まさか”の2-0。勝敗は決したと思われた。しかしバルサは後半の半分が過ぎる頃になってようやく眠りから目を覚まし、コウモリを追い詰めていく。きっかけとなったのは50分、トゥレを下げてアンリを投入した選手交代だった。とはいっても、交代がすぐに効果を発揮したわけではない。アンリ登場後も70分を越えるまで、バルサはほとんどこれといったシュートを放てていないのだ。
局面が変わったのは71分のことだった。左サイドをえぐったシルビーニョから絶妙のクロスが送り込まれ、これをアンリが頭で合せて待望のゴールをゲット。ボールはポストに当たりながらも、ネットを揺らしてくれた。
これであと1点奪えば、決勝へ進める!バルセロニスタの歓喜はしかし、わずか1分しか続かなかった。直後の72分、またもバルサ守備陣の緩みを見逃さなかったマタが、ビジャのセンタリングをあっさりと決めて3-1としたのである。
だが試合はそれでは終わらなかった。むしろここから、ゲームは白熱の展開を見せることになる。実際、バルサの攻撃がガラッと改善されたわけではなかった。しかしようやくチームに出てきた勝利への執念が、希望の光を呼び起こすのだ。80分、今度はエトーがバレンシアエリア内にてこぼれ球を拾い、強烈な左足にてずどんとボールをネットに突き刺した。3-2。まだ勝負は分からない。
3-3に追いつけば、決勝進出となるのはバルサである。それがアウェイゴールの醍醐味。一発食らえば、時間的に見てもほぼアウトとなるバレンシアの心の中に、その恐怖が芽生えていった。必死で守るバレンシア、押せ押せで攻めるバルセロナ。惜しむらくはこのバルサの反撃が、あまりにも遅かったことだろう。もっと早くこのプレーが出来ていれば、あるいは決勝行きの切符はバルサだったかもしれない。結局スコアは同点とはならず、バルサはついにタイトルを失った。必然的な敗退だった。
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