バルサの夢は、17歳少年のゴールによってつながれた。
ベティス戦での惨敗を受け、負けなら監督更迭もささやかれたシャルケ戦はバルサにとってひとつの正念場だった。チームのポテンシャルだけなら、バルサが圧倒的に有利。しかしヨレヨレのバルサはその潜在能力を発揮することは出来ず、試合は薄氷を踏む展開となっている。幸運にも勝利できたのはボージャンの才能と、シャルケのゴール前での精度不足に助けられたから。たとえば次のラウンドで当たる(であろう)マンチェスターを、このチームが零封するとは考えにくい。
試合は両チームとも、非常に慎重な入り方をしていた。最初からガンガン飛ばすのではなく、相手の出方を警戒してのパス回し。バルサにとっては、シャルケがこちらを大いにリスペクトしてくれたのがありがたかった。さほどプレスを与えるでもなくボールを譲ってくれたなら、さすがにチャビ&イニエスタは楽にボールを配給できる。7分、最初のチャンスもチャビからイニエスタへのスルーパスだった。
これはGKノイアーのチェックによって防がれたイニエスタだったが、次は失敗はしない。12分、美白カンテラーノからアンリへと絶妙なキラーパスが通り、ノイアーと1対1でシュート。これは惜しくもブロックされるのだが、そのこぼれ球をゴール前に流し込んだところを、詰め寄ったボージャンが押し込んでゴール!ボージャン、大会史上2番目の若さとなる得点でバルサがリードを奪った。これぞ生粋ゴレアドールの得点嗅覚だ。
ここまでの展開はバルサ優位であり、ゴールはその報酬といえる。しかし相手がそれにて目を覚ましてくると、ダメ押しできないのはこのライカーバルサの大いなる問題点。これといって脅威となる攻撃はないものの、シャルケはバルサに圧力をかけ始め、空中戦の強さを生かすべく、エリア内へとボールを送り込んでくるようになった。前半はそのまま、特に見せ場もなく終了。
そして後半、シャルケはさらにプレッシャーの度合いを強めてくる。それに対し、バルサはほぼ防戦一方だった。ボールタッチは多かったが、深みがまったくなく、チャンスには至れなかった。一方でゲルマンチームの作戦は変わらない。高さという武器を最大限に活用するため、シャルケはとにかくバルサエリアにヘディング用のボールを入れてきた。あとは機を見てのロングシュートだ。
2点目が入ったなら、それはこの試合を決定付けるだけでなく、セミファイナル進出にも多大な貢献をしただろう。だがそのダメ押し点を入れられないのが、このライカーバルサの弱み。気持ちはあるのに上手く機能してないのか、それともそもそもその気がなく、1点を守りきろうとしているのか(どうも後者の印象を受ける)。いずれにせよバルサのプレーには怖さがなく、平凡で単調だった。
70分前後は、バルサにとってピンチの連続。67分にはパンダーのロングシュートをあわやアサモアに押し込まれかけ、その3分後にはライン裏に抜け出したアンティトップのシュートが、右ポストをかすめている。どうにかシャルケを止めたいバルサはトゥレに代えてマルケスを送り込むも、状況に変化なし。ここからはサイドからのクロスを頭で合せる場面が多くなり(90分のボルドンのヘッドはバルデスが好セーブ)、よくも同点弾を食らわなかったものだ。
シャルケがバルサという名前に幾分ビビッてくれたこと、そしてシュートが枠内に飛ばなかったことが、バルサの勝因。このままではシャルケの壁は突破できたとしても、マンチェスターにはボコられそうで怖すぎる。それまでにきっかけをつかみ、復調していればいいのだが・・・。
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