史上最悪レベルに酷い内容のゲームではあったが、勝ちは勝ち。2試合合計2-0の“完勝”にて、マンチェスターとの決戦の切符を手に入れた。
昨日の英雄は、前線で唯一生き生きとプレーをし、チャンスの匂いを感じさせてくれたボージャン・ケルキッチと、その少年からのアシストを冷静に決めてくれた自己犠牲精神の塊、トゥレ・ヤヤとなろう。その他の選手は・・・どうにか頑張ろうとはしているのだろうけど、狂った歯車がなぜ狂ったのかが分からず、ただ闇雲にプレーしている感じ。リーダー不在が恐ろしく顕著だ。
今回の結果により、チームライカーは最低限のミッションをクリアした。クラブにとって、セミファイナリストの権利はまさに地獄に渡し舟のようなもので、これ以上ありがたいことはない。しかし何故カンプノウであのような悲惨なことが起こってしまったのかを全力で分析、対処しない限り、本当にただの結果先送りにしかならないだろう。
正直なところ、バルサが4強に生き残っているのは、シャルケのおかげとしか言いようがない。第1戦と同様に、猛烈にバルサゴールに襲い掛かりながらも、ネットを揺らすことが出来なかったシャルケ。前半のプレーは、特に目を覆いたくなるような惨状だった。この魂を奮い立たせなければならない試合で、どこかの素人チームのようなプレーを見せるバルサ。チームとしてのまとまりはゼロ、とにかく最悪という言葉でも足りないくらいのダメップリだった。
フィジカルもメンタルも、チームの一体感も、何もかもがシャルケが上。このバルサはチームの“骨”であるロナウジーニョ、デコ、メッシ抜きでは本当になにも出来ない集団に成り下がってしまっている。バルサはいったい、何を恐れていたのだろうか。守備ラインは低く下がり、プレスに寄与しない。チャビとイニエスタはマークを受け、中盤は機能不全。パスはことごとくシャルケにカットされ、容易にエリア前まで回され、シュートの雨を降らされた。もし彼らにいくらかの正確性があれば、確実に悲劇的なスコアとなっていただろう。
7分にはアルティントップのロングシュートをバルデスがどうにかこうにかライン際でかき出し、13分にはクラニーに際どいヘディングを放たれ、21分にはラフィーニャの右クロスに裏を取られ、突っ込んだ二人が奇跡的にボールに触れずにノーゴール。その他シュートだけなら数知れず、よくあれで無失点だったものだと思わずにはいられない。白ハンカチもちらほら、スタンドに舞っていた。
一方でバルサのチャンスといえば、12分、イニエスタの鋭いスルーパスをチャビが反転しながら受け、エリア内でGKノイアーと1対1で放ったシュートのみ。しかしこれはゲルマンキーパーの瞬時の反応により、コーナーとなっている。しかし勝負は分からないもの。前半も終了しようかという43分、右サイドを突破したボージャンのクロスがデフェンサに当たってふわりと上がり、あわやオウンゴールとなるところをどうにかクリアしたそのボールを、正面にいたトゥレが押し込んでしまったのである。内容ゼロながら、スコアは1-0。これでバルサは不思議と“落ち着き”を取り戻した。逆にシャルケは、大いに凹んでいた。
後半のバルサは“酷くはないが退屈極まりないチーム”にまで回復し、シャルケは自らの努力がまったく報われなかったことに意気消沈した。すると存在感を出したのがボージャン。持ち前のテクニックとスピードでドイツの大男たちを翻弄し、バルサ唯一のオプションとして輝きを放っていた。その彼が最初の交代者であったわけだから、カンプノウのブーイングも理解できよう。ただひとりの希望を奪われ、スタンドは大きくそれに反発した。また、63分にはプジョルがアサモアへのファールでカードをもらい、マンチェスターとの第1戦が出場停止となっている。
というわけで、シャルケとの準々決勝は、相手の決定力不足によって命拾いをしたバルサが、運の力によって辛くも勝利を収めることとなった。これは喜ばしいことではあるが、次に待ち受けるのは運だけでは絶対に叶わないマンチェスター・ユナイテッド。これからの2週間、セミファイナリストとして恥じないチームに少しでも近づけていくことが、チームライカーへの必修課題となる。もしそれが出来なければ、とんでもない赤っ恥をかくことになるだろう。そしてクラブは大炎上だ。
|