頭の中は、すっかりとマンチェスター。リーガはもう重要ではないといったふうの、スタメンとプレー姿勢だった。
今回の先発メンバーは水曜のマンチェスター戦から、実に8人が入れ替わっている。メッシ、チャビ、エトーはメンバーに招集されず、デコとバルデスはベンチ。イニエスタとミリートは出場停止だ。だからといって勝ちを放棄したわけではないが、プレーへのテンションはチャンピオンズに比べると明らかに低調。しかも相手が後半戦“最強”チーム、デポルティーボ(リーガ4連勝、リアソール5連勝中)とあらば、苦戦は必至である。
ゲームはしかし、意外と拮抗した展開でスタートする。来週のマンチェスター戦をいい気分で迎えたいバルサは、少なくとも前半はエンジンがそれなりに回っていた。決定的なチャンスは、2回。ひとつは13分、ボージャンからの深いスルーパスに抜け出したグジョンセンが、GKアワテと1対1からシュートに持ち込むも、枠を捉えられなかった。ふたつめは37分、プジョルのスルーパスでサイドを突破したアンリから、中央へ絶妙の折り返し。しかしボージャンがシュートに上手く持ち込めず、DFに弾かれて終わっている。
チャンスの度合いでいえば、デポルの方が濃密だった。4連勝も納得の、テンポいいパス展開を見せるデポルティーボ。攻撃で目立っていたのはラフィタとチスコで、彼らは多くのチャンスに絡んでいる。序盤はミドルシュートが中心だったが、徐々に危険度は上昇。特に26分、ゴール前の混戦からチスコのシュートがクロスバーを直撃した場面は決定的。その他にもラフィタはピントを脅かすシーンをいくつか作っており、存在感があった。バルサ守備陣の不正確さも目立っていた。
前半は0-0のまま終了。そして後半、いよいよ頭がマンチェスターに飛んでしまったバルサは、プレーから激しさというものがとんと失われる。それに比例して、デポルはしっかりとチャンスを活かせるようになっていた。となると、均衡は軽く破られる。53分、右サイドのマヌエル・パブロが粘り、エリア内のラフィタがさらに粘り、ゴール正面に送り込んだボールをフアン・ロドリゲスが流し込んで先制点ゲット。プレー内容に対する、正当な報酬と呼べるゴールだった。
これに対しバルサは反発するどころか、時間の経過とともにショボくなっていく。ボール紙廃立ではバルサが上回っていても、試合をコントロールしているのはデポルティーボ。ライカーとしてもこの試合を無理に獲りにいくつもりはなく、そこからの交代もマンチェスター戦を睨んだものとなっている。決戦を控えるトゥレとザンブロッタは次々とお役御免となり、リズムをつかむべくデコが登場などだ。気合が入ってないので、もちろんゲームの流れはこれといって変わらない。
追加点の場面など、集中してないことの見本のようだ。75分、左サイドからのフリーキックを、ファーのパブロ・アモがドフリーで余裕のヘディングシュート。試合はこれで完全に決まった。ここからはまったくもって終了の笛がなるのを待つだけながら、終了間際に立て続けにカードをもらっているのが悲しいところだ。チャンピオンズのセミファイナリスタも、やる気がなければこの程度。
この試合のバルサからは、「数字的にゼロでなくなるまで優勝のために戦う」という姿勢が感じられなかった。状況的に仕方のないこととはいえ、やはりバルサとしては寂しいものだ。リーガでのイメージは、もはやこれ以上汚れようのないほどに最悪。もし今日ビジャレアルが勝利すれば2位の座はさらに遠のくし、負けたら負けたで、マドリの早期優勝が決まってしまう。この痛みを癒せるのはオールド・トラッフォードでの成功しかないが、上手くいってくれることを祈る。
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