フランク・ライカーの、そしてチームライカーにとってのカンプノウ最終戦は、今季を象徴するかのような悲しい逆転負けとなった。そしてスタンドはパニョラーダ。
この試合の主役はただひとり、ライカーだった。いろいろあったけれども、最後は感謝の気持ちを表したいというファンが集まったカンプノウ。ライカーがベンチから姿を現すたび、拍手が送られる。それと対照的に、パルコのラポルタ会長、ならびに戦犯とみなされた選手たちに対しては、激しく執拗な口笛によるブーイング。スタジアムは一種異様な雰囲気となっている。
ゲームはまず、鮮烈な口笛によって始まっている。もちろん標的はベルナベウで最悪のプレーをした選手であり、特に敵前逃亡と捉えられているデコ、エトー両人への口笛は手厳しかった。まるでフエラ試合であるかのように、彼らがボールを持つたびに送られるブーイング。メッシ、トゥレらへの反応は逆に優しかった。
そんな非常にやりにくい空気の中、バルサはそれでも先制に成功している。17分、やはりこの日もっともマジョルカ守備陣の脅威となっていたメッシがドリブル突破によりエリア前に切れ込み、デフェンサの足に当たって転がるボールを、左のアンリがダイレクトに突き刺したのである。アンリらしい、カーブのかかった強烈なシュート。今回はファーではなく、ニアだった。
その後のゲームの展開は、特にこれといって激しい動きもなく、平凡に進んでいっている。ボールは基本的にバルサだが、いつものようにゴール近くでのプレーに精彩を欠き、チャンス自体がない。マジョルカもこれといった攻め手がなく、見せ場はハーフタイム前の2回のセットプレーくらいだった。しかしこれは前半MVPのひとりピントがジャンプ一番弾き出し、失点には至っていない。
そして後半、早い時間帯にバルサは追加点により、試合の主導権をグンと引き寄せた。56分、左サイドをエトーとアンリで大きくつなぎ、アンリがふわりとしたセンタリングを供給。これに中央のメッシが強烈なボレーで合わせ、GKモヤがどうにか弾いたところを、詰めていたエトーが押し込んで見せたのである。ゴール後に2度、3度とネットにボールを蹴りこむエトー。やはり口笛が相当に悔しかったのだ。その顔にも、笑みはまったくなかった。
試合は本来ならこれで、バルサ色となるべきだった。しかし今季何度もお目にかかったように、ここからきちんと押さえ切れないのがバルサ。あるいはチームは、2点差に余裕を感じてしまったのかもしれない。ライカーがジョバニ(63分)、ウラゲー(67分)といった来季はチームにいなさそうな選手たちを送り込む“高校野球9回”的交代をしている一方で、UEFA杯出場を狙うマジョルカはまだ勝負を諦めてはいなかった。このメンタルの差が、その直後ゲームに影響を及ぼす。
まずは67分、コーナーキックの一連の流れから、エリア左角のボルハ・バレーロのミドルがゴール右隅に豪快に刺さって2-1。チュラムの延ばした足に当たり、コースが変わりつつ入るなどツキもあった。この時間帯は明らかにマジョルカペースであり、さらにその3分後にはカウンターで攻め込まれたあと、クリアしきれないところを右にいたウェボに決められて同点とされてしまった。地面にたたきつけるトリッキーなボレーだったが、これが弧を描きゴールに入る技ありシュートである。
バルサはその後どうにかマジョルカの攻めを凌いでいくのだが、最後まで持たないのも今季を象徴している。エヂミルソンが2枚目のカードで退場となった直後の93分、何気なく入ったボールを、エリアど真ん中のグイサがバルサ守備陣の動きを落ち着いてかわしてあっさりゴール。守備選手はゴロゴロいたのに・・・信じられなーい。なにやってんだか。
2-0からの逆転を許したことで、カンプノウの観客の怒りも爆発する。ライカーのハッピーな送別会としたかったゲームは、結局のところ終わってみればパニョラーダ。観客数は4万人弱と寂しかったが、怒りレベルが高いのでハンカチ乱舞もスペクタクルになっていた。勝っていればあったとされるライカーによる挨拶もなくなり、騒然とした雰囲気で試合は終了。チームライカーの悲しい地元最終戦だった。
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